整理回収機構提起の朝鮮総連本部強制競売のため執行文付与の訴えで第1回口頭弁論開かれる


整理回収機構が朝鮮総連に対して627億円を請求した訴訟で勝訴したため、朝鮮総連本部の土地と建物を強制競売しようとしたところ、登記が合資会社朝鮮中央会館管理会の名義になっていたため、競売できず、その会社を相手取り執行文付与の訴えを提起しています。
登記名義が合資会社朝鮮中央会館管理会になっているのは朝鮮総連が権利能力なき社団であり、自らが所有者となれないからのようです。
しかし、よくよく検討してみると非常に微妙な法的問題を含んでおり、難問である感じがします。
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「総連一体」否定、合資会社が主張・強制競売で初弁論(日本経済新聞2007年9月21日)
整理回収機構(RCC)が在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の中央本部の強制競売を進めるため、登記上の所有名義人、合資会社「朝鮮中央会館管理会」に対する執行文の付与を求めた訴訟の第1回口頭弁論が21日、東京地裁(山崎勉裁判長)で開かれた。
 合資会社側は「総連と合資会社は一体ではない。不動産の名義通り所有している」と主張し、争う姿勢を示した。RCCは「登記は便宜上のもので、実質的な所有者は総連」としている。
 RCCは6月、総連に対する627億円の債務返済請求訴訟で勝訴。中央本部の土地・建物の強制競売を同地裁に申し立てたが、総連は法人格がない「権利能力なき社団」で不動産を所有できず、登記上の所有者が合資会社だったため、競売を認める決定は出なかった。(13:09)
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執行文付与の訴えとは、民事執行法33条に規定されているもので、同法27条による執行文の付与を受けられないときに提起できる訴訟です。
また27条による執行文付与を受けられるときでも、既判力を持って執行力を確定させるためにあえて用いることも可能とされています。
民事執行法
第27条
請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合においては、執行文は、債権者がその事実の到来したことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
2 債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文は、その者に対し、又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるとき、又は債権者がそのことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
3 執行文は、債務名義について次に掲げる事由のいずれかがあり、かつ、当該債務名義に基づく不動産の引渡し又は明渡しの強制執行をする前に当該不動産を占有する者を特定することを困難とする特別の事情がある場合において、債権者がこれらを証する文書を提出したときに限り、債務者を特定しないで、付与することができる。
一 債務名義が不動産の引渡し又は明渡しの請求権を表示したものであり、これを本案とする占有移転禁止の仮処分命令(民事保全法(平成元年法律第九十一号)第二十五条の二第一項に規定する占有移転禁止の仮処分命令をいう。)が執行され、かつ、同法第六十二条第一項の規定により当該不動産を占有する者に対して当該債務名義に基づく引渡し又は明渡しの強制執行をすることができるものであること。
二 債務名義が強制競売の手続(担保権の実行としての競売の手続を含む。以下この号において同じ。)における第八十三条第一項本文(第百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による命令(以下「引渡命令」という。)であり、当該強制競売の手続において当該引渡命令の引渡義務者に対し次のイからハまでのいずれかの保全処分及び公示保全処分(第五十五条第一項に規定する公示保全処分をいう。以下この項において同じ。)が執行され、かつ、第八十三条の二第一項(第百八十七条第五項又は第百八十八条において準用する場合を含む。)の規定により当該不動産を占有する者に対して当該引渡命令に基づく引渡しの強制執行をすることができるものであること。
イ 第五十五条第一項第三号(第百八十八条において準用する場合を含む。)に掲げる保全処分及び公示保全処分
ロ 第七十七条第一項第三号(第百八十八条において準用する場合を含む。)に掲げる保全処分及び公示保全処分
ハ 第百八十七条第一項に規定する保全処分又は公示保全処分(第五十五条第一項第三号に掲げるものに限る。)
4 前項の執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行は、当該執行文の付与の日から四週間を経過する前であつて、当該強制執行において不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができる場合に限り、することができる。
5 第三項の規定により付与された執行文については、前項の規定により当該執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行がされたときは、当該強制執行によつて当該不動産の占有を解かれた者が、債務者となる。
第33条(執行文付与の訴え)
第二十七条第一項又は第二項に規定する文書の提出をすることができないときは、債権者は、執行文(同条第三項の規定により付与されるものを除く。)の付与を求めるために、執行文付与の訴えを提起することができる。
2 前項の訴えは、次の各号に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める裁判所が管轄する。
以上の条文から分かるように、執行文付与の訴えとは、請求権が条件成就にかかる場合や執行力の拡張が必要な場合に用いることになります。
よって執行文付与の訴えの審理の対象は、条件成就または承継の事実の存否のみとされています。
本件においては、債務名義に表示されているのは朝鮮総連ですが、執行しようとしている土地と建物の登記が当該合資会社になっているため、執行力の拡張が必要となるわけです。
問題となるのは、執行力を拡張できるかという点です。
仮に債務名義となった判決の口頭弁論終結時後に登記が移されていたのなら、民事訴訟法115条3号より既判力が拡張されますので、問題なく執行できるところなのですが、朝鮮総連はそもそも権利能力がないので、所有したことがなかったわけです。よって基準時前後の話にはなりません。
そこでまずでてくるのは、当該合資会社が実質的に所有しているのかそれとも便宜的であるかという点でしょう。
実質的に所有しているのであれば、別人の財産ということになりますので執行できないということになります。
便宜的に合資会社名義になっているのだとしても、権利能力なき社団に対する債務名義で便宜的に登記を有している法人に執行力を拡張できるかがさらに問題です。
権利能力なき社団の不動産なら普通は代表者名義にするところなのですが、ここではなぜか法人になっているということをどう評価するかです。
代表者名義なら、権利能力なき社団の債務は構成員全員に帰属するので、執行の道が開けますが、便宜的な法人をかませるとできなくなるとするなら不当な話に見えます。
しかし、執行文付与の訴えで法人格濫用を認めた場合に関しては判例がありますが、執行力の拡張は不可としています(最判昭和53年9月14日判時906号88頁【上田養豚事件】)。
よって、現状ではなんとも判断しかねる感じがします。
もしかしたら最高裁までいけるかもしれません。
※事実関係については報道されている内容に依拠していますので、誤りがあるかもしれません。事実が変わると法的にも一気に変わってしまう類の話ですので、その点についてあらかじめお断りします。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

2 thoughts on “整理回収機構提起の朝鮮総連本部強制競売のため執行文付与の訴えで第1回口頭弁論開かれる

  1. 最高裁、権利能力なき社団を債務者とする債務名義に基づいて当該社団の構成員の総有に属するが第三者が登記名義人になっている不動産に強制執行をする場合、登記名義人に対する執行文の付与を求めることはできず、当該不動産が構成員の総有に属することを確認する確定判決その他これに準ずる文書を添付して強制執行をすることができると判示

    長くわかりにくいタイトルで申し訳ないです。 報道で著名ですが、朝鮮総連の本部に対する強制執行が争われている事件があります。 この事件について、最高裁で執行法の問題について意義深い判断が示されました。 整理回収機構が朝鮮総連に対して600億円を超える債務名義を取得しており、これに基づいて朝鮮総連の本部に対する強制執行をしようとしたところ、朝鮮総連は権利能力なき社団であり登記の名義人になることができず、登記名義が合資会社「朝鮮中央会館管理会」になっており、そのままでは強制執行できないという事態になり…

  2. 最高裁、権利能力なき社団を債務者とする債務名義に基づいて当該社団の構成員の総有に属するが第三者が登記名義人になっている不動産に強制執行をする場合、登記名義人に対する執行文の付与を求めることはできず、当該不動産が構成員の総有に属することを確認する確定判決その他これに準ずる文書を添付して強制執行をすることができると判示

    長くわかりにくいタイトルで申し訳ないです。 報道で著名ですが、朝鮮総連の本部に対する強制執行が争われている事件があります。 この事件について、最高裁で執行法の問題について意義深い判断が示されました。 整理回収機構が朝鮮総連に対して600億円を超える債務名義を取得しており、これに基づいて朝鮮総連の本部に対する強制執行をしようとしたところ、朝鮮総連は権利能力なき社団であり登記の名義人になることができず、登記名義が合資会社「朝鮮中央会館管理会」になっており、そのままでは強制執行できないという事態になり…

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