東京地裁、携帯電話への音楽転送サービス「MYUTA」を著作権侵害と判断


判決からかなりたってしまい、時機を逸している感じがありますがとりあげます。

ブロードバンドの発達でネットワークストレージを利用したサービスが次々現れていますが、それらの中にテレビのコンテンツや音楽など著作物を保存するサービスの一群があります。
どのように定義したらいいのかはわかりませんが、一般に公開することを目的とするものではなく、私的複製の一環としての著作物の活用にストレージをかませるというものが多いのが特徴です。

まねきTVの件では、ストレージは使われていないものの、テレビを転送してPCでみることができるための機器を設置するサービスを適法としました。

一方で、同じテレビで、HDレコーダーを活用したロクラクⅡビデオデッキレンタルというサービスは著作権侵害とされました。

東京地裁平成19年03月30日決定 平成18(ヨ)22046 著作隣接権等侵害差止請求仮処分命令申立事件

さらに、表題に掲げた事件で、東京地裁は、携帯電話へ会員自らが保有している音楽を転送できるようにする「MYUTA」というサービスを著作権侵害と判断しました。

次々とでてくるサービスですが、著作権侵害になるかならないかの決め手はどこにあるのか、複数の裁判例を見ることで考えてみたいと思います。

東京地裁平成19年05月25日判決 平成18(ワ)10166 著作権侵害差止請求権不存在確認請求事件

まず「MYUTA」の内容ですが、事実認定によると会員登録制のサービスで、会員が自ら調達したmp3ないしwmaファイルからaviファイルを作成して、それを3g2ファイルに変換、サーバーにアップロードすると携帯電話にダウンロードできるようになるというものです。
アップロードしたデータにアクセスできるのは会員の携帯電話だけであり、1:1対応になっているとされています。

本件訴訟は、MYUTAのサービスを提供するイメージシティ株式会社が、JASRACを相手取って、差止請求権の不存在確認を求めたものです。

争点は二点になります。
①複製の主体が誰であるか
②本件複製行為が公衆送信権侵害か

①は、MYUTAの提供会社である原告かアップロードするユーザーのどちらかという問題になります。
ユーザーだと、複製行為が著作権侵害であるかの当否はともかく、提供会社としてはサービスを行うのに問題がないということになるわけです。
JASRACは、差止をする相手はユーザーだということになり、矛先をかわすことができます。

この点について、東京地裁は、主体を、提供会社としました。
理由についてはリンク先の判決全文では30~31頁にかけて述べられていますが、決定的なのは、携帯電話で利用可能な形にするには技術的にかなり難がありそれを可能とする仕組みを提供会社が整えているという点だと思われます。
このことについては、この部分に先立つ27~28頁にも「極めて重要なプロセス」として言及があります。

②について、主体が提供会社と判断したため、利用が1:1対応になっていても、潜在的にユーザーは不特定として公衆送信にあたるとしています。

会員登録してからアップロードするのであり、不当的多数がアクセス可能な状態にしているのとは違うような気がしますが、主体を提供会社としているのでそう解せないこともないかもしれません。
鶏が先か卵が先かという問題のような気もしますが。


①②をまとめて捉えて著作権侵害になるのはどういうときなのかと考えてみると、提供会社がかなり寄与をするようなサービスでは、主体が提供会社になって著作権侵害となるといえるかと思います。

上記「まねきTV」では、提供会社は場所を貸して機器を置いてあげて、アンテナとつないでくれるだけであり、他には何のサポートもしてくれません。普通のロケーションサービスと対価も含めてなんら変わらないということが判示では強調されていました。

これに対して「MYUTA」では、上記のように技術的に難しい携帯電話で利用可能にすることを提供会社がシステムを用意して実現していることが引っかかったものと評価できます。

技術的な発展が非常に盛んですので、今後も司法判断を伺うサービスの登場は続くと思いますが、あまり親切でないサービスなら適法となるというのは、単純に考えるとおかしな感じがします。

判決から3ヶ月もたってしまっていますので、本件判決についてネット上にはすでに見解がかなり多く出されています。
専門家ではない方からは、よく分かっていない裁判官が出した判決だという意見が結構ありましたが、裁判長の高部さんは知的財産の専門家であり、多くの知的財産判決に関与しておられますので付言しておきます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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