「牛角」のレックスHDのMBOで少数株主が全部取得条項付種類株式の対価について価格決定の申立て


焼肉店「牛角」などを展開するレックスホールディングスがファンドと経営者によるMBOを実施していますが、その過程で対価への不満から買い付けに応じなかった株主が全株取得の一部プロセスの全部取得条項付種類株式の価格決定の申立てを東京地裁に起こしました。
レックスHDのMBOの仕組みをまとめた上で何が問題となっているのかをまとめます。
実は当該株主が問題としている点と価格決定の申立ては直接は関連しません。
本件MBOの仕組みは、以下のような流れからなります。目標は全株式の取得ですので、極めて複雑かつ技巧的になっています。
①公開買付けで株主総会特別決議が可能になる株式を取得
②定款変更で全株式を全部取得条項付種類株式へ変更
③特別決議で全部取得条項付種類株式を取得、対価には新しい普通株式をあて、交換比率を調整して公開買付に応じていなかった株主には端数のみを割り当て
④端数を競売のうえ現金交付で処理
かなり迂遠な手続に見えますが、買収する側に議決権を集めるのが目的ですので全部取得条項付種類株式の対価に現金を当てるわけにはいかず、同時に少数株主を追い出さねばならないので、代わりに比率を調整した普通株を当てるという工夫をしているわけです。
普通株を取得条項付種類株式にするのは、全株主の同意がいるので(会社法110条1項)、現実的には不可能です。しかし全部取得条項付株式への変更は定款変更でできるのでかなり楽です。
この違いは、全部取得条項付種類株式の場合は、取得の際に特別決議が必要(309条2項3号)なので株主の意向を確認する機会があることと、そもそも定款変更時に反対株主には株式買取請求権があり(116条1項2号)、取得時にも裁判所への価格決定の申立て(172条1項)があるからゆるくされています。
そこで全部を一旦取得してかわりに比率を調整して普通株を当て、買収側以外の株主の議決権をなくしてしまおうというわけです。単元未満株式であったら、会社が強制買い上げということはできませんが、全部取得条項付種類株式の取得対価として割り当てた株式が端数となった場合は、234条1項2号より、競売と現金の交付で処理することになっているため、少数株主に現金を交付して退出してもらえることになります。
会社法で予定していたスキームではありますが、中々よく考えたものだと思います。
一方、公開買付に応じなかった株主には別の事情から不満があることが明らかになっています。
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「牛角」レックスのMBO、買い取り価格司法判断求める(日本経済新聞2007年4月11日)
焼き肉店「牛角」のレックス・ホールディングスが進める経営陣による企業買収(MBO)を巡り、これに応じなかった個人株主120人と法人株主1社が12日、東京地裁に公正な株式買い取り価格を決定するよう申し立てをした。
 レックスは昨年11月、投資会社の支援を得て株式公開買い付け(TOB)を実施した。全株式の取得を5月上旬にも完了する予定。
 買い取り価格は1株23万円で、TOB前の1カ月間の平均価格を基準としているが、同社は直前の8月下旬に2006年12月期の業績下方修正を発表。基準期間が株価急落の局面と重なっていたため、株主らは「意図的かつ不当に低く価格を決めた。50万円を下回るべきではない」と主張している。
(略)
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以上から分かるように公開買付の価格そのものに対する不満というわけですが、全株取得条項付種類株式の価格決定の申立ては、全株取得条項付種類株式の取得対価に関するものですので、取得のかなり前の事情を争えるのかかなり疑問です。
裁判所が決定するのは全額金銭になるので、どの辺まで斟酌して決めるのかということになるかと思いますが、難しいように思えます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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