最高裁、国税の法定納期限等以前に対抗要件具備の取立権限留保集合将来債権譲渡を有効と判断


債権総論の論点の一つに将来債権の譲渡というテーマがあります。
要するに担保として、あらかじめ将来の債権譲渡を約しておくので、これは譲渡担保です。

判例の蓄積から、「できる」ということは確定していますが、①債権の特定性や、②債権譲渡の時期は譲渡契約の時なのか、債権発生の時なのかについて争点があります。

判例は、①についてはゆるく解しています。
最判平成12年4月21日民集54巻4号1562頁は、識別可能な特定がされていればよいとしているので、発生原因と譲渡の対象とする債権の発生時期を区切ってあれば、まず大丈夫です。

②は、債権譲渡契約の内容によって結論が分かれています。
譲渡契約を締結して債務者に確定日付のある通知をして、譲渡担保権者から実行通知があるまでは取立は従前どおり譲渡担保権設定者が行うという形があります(内田教授はこれを取立権限留保型集合債権譲渡と呼称されています)が、最判平成13年11月22日民集55巻6号1056頁は、契約の時点で有効な譲渡がされており、対抗要件には債権譲渡のでよいとして、取立権の留保があるものの、譲渡担保権設定者が確定日付のある通知を送った時点で対抗要件を具備するとしました。

これに対して、譲渡の予約や停止条件付譲渡の形式であると、譲渡の効果が生じるのは条件成就のときになるとして合意の時点では有効な対抗要件を具備できないとされています。

よって実務的には、前者の取立権留保型を使うことになりますが、国税徴収法に譲渡担保に供されていても破ることができる場合の規定があるために、その点について争いになったケースで最高裁判決が出ました。

最高裁判所第一小法廷平成19年02月15日判決 平成16(行ヒ)310債権差押処分取消請求事件

国税徴収法では、24条に譲渡担保権者からも担保権設定者の分の税金を徴収できる場合を定めています。

第24条(譲渡担保権者の物的納税責任)
納税者が国税を滞納した場合において、その者が譲渡した財産でその譲渡により担保の目的となつているもの(以下「譲渡担保財産」という。)があるときは、その者の財産につき滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税に不足すると認められるときに限り、譲渡担保財産から納税者の国税を徴収することができる。
2 税務署長は、前項の規定により徴収しようとするときは、譲渡担保財産の権利者(以下「譲渡担保権者」という。)に対し、徴収しようとする金額その他必要な事項を記載した書面により告知しなければならない。この場合においては、その者の住所又は居所(事務所及び事業所を含む。以下同じ。)の所在地を所轄する税務署長及び納税者に対しその旨を通知しなければならない。
3 前項の告知書を発した日から十日を経過した日までにその徴収しようとする金額が完納されていないときは、徴収職員は、譲渡担保権者を第二次納税義務者とみなして、その譲渡担保財産につき滞納処分を執行することができる。この場合においては、第三十二条第三項から第五項まで(第二次納税義務の通則)及び第九十条第三項(換価の制限)の規定を準用する。
4 譲渡担保財産を第一項の納税者の財産としてした差押は、同項の要件に該当する場合に限り、前項の規定による差押として滞納処分を続行することができる。この場合において、税務署長は、遅滞なく、第二項の告知及び通知をしなければならない。
5 第二項の規定による告知又は前項の規定の適用を受ける差押をした後、納税者の財産の譲渡により担保される債権が債務不履行その他弁済以外の理由により消滅した場合(譲渡担保財産につき買戻、再売買の予約その他これらに類する契約を締結している場合において、期限の経過その他その契約の履行以外の理由によりその契約が効力を失つたときを含む。)においても、なお譲渡担保財産として存続するものとみなして、第三項の規定を適用する。
6 第一項の規定は、国税の法定納期限等以前に、担保の目的でされた譲渡に係る権利の移転の登記がある場合又は譲渡担保権者が国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となつている事実を、その財産の売却決定の前日までに、証明した場合には、適用しない。この場合においては、第十五条第二項後段及び第三項(優先質権の証明)の規定を準用する。
7 第一項の規定の適用を受ける譲渡担保権者は、第十章(罰則)の規定の適用については、納税者とみなす。

例外となるのは、下線で示した第6項でして、「法定納期限等より前に譲渡担保財産となっている」とはどういうことかがこの事件の争点です。

上記のような取立権留保型の判例の積み重ねから考えて、契約時点で確定的で債務者に通知をしてあればOKということになりました。
これまでの判例の流れから言うと順当に導かれる判示だと思います。
平成13年判決の延長上の判決であり、判示したことのない点だったので最高裁判決まで来ました。

実は高裁判決では、それぞれの将来債権の発生時には一旦滞納者に属するのだから、法定納期限等より後になるという判断を示して国を勝たせていたのですが、すると平成13年判決と整合しなくなってしまうため最高裁はこれを破棄、譲渡担保権者を勝たせていた第一審判決を支持しました。

税金なら話は別という考え方もありかもしれませんが、譲渡担保権を後から破ろうとして出てくるのはまず税金がらみなので、否定してしまうとすべてひっくり返ってしまう可能性があるためと思われます。
実は平成13年判決も被告は国でした。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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