【タバコ訴訟】米連邦最高裁、懲罰的損害賠償を命じたオレゴン州最高裁判決を破棄


アメリカでタバコを吸ったせいで癌になったとしてタバコメーカーを訴えた事件がいくつもおき、とんでもない額の損害賠償を認めたものが出て、日本でも話題になりました。
懲罰的損害賠償があるアメリカの独自性を際立たせる捉え方が日本ではされていましたので覚えている方もおられると思います。

そのような事件のうちの一件で、米大手タバコメーカーのフィリップ・モリスがオレゴン州最高裁までいって敗訴して95億円の損害賠償を命じられながらも、連邦最高裁に裁量上訴を申立てていた件で連邦最高裁は訴えを認め、フィリップ・モリス敗訴の判決を破棄、オレゴン州最高裁に差し戻しました。

Philip Morris USA v. Williams, No. 05-1256 (U.S.S.C. February 20, 2007)

事件はジェシー・ウィリアムズという人が喫煙のせいで死亡したとして、遺族が損害賠償を求めたものです。個人の死の損害賠償だと高が知れますが、裁判所は懲罰的損害賠償として95億円の支払を命じていました。

これに対して、連邦最高裁は、この原審判決は、原告に含まれていない人の被害も考慮に入れて懲罰的損害賠償を認めており、被告の防御の機会を奪ったとして憲法で保証された法の適正手続の原則に反すると指摘、原審判決を破棄、オレゴン州最高裁への差し戻しとこの指摘に適合するような新たな陪審審理を求めています。

連邦最高裁の指摘はもっともですが、懲罰的損害賠償自体がそもそもわざわざ訴訟を起こして社会的な不利益を取り除くのに寄与した人にご褒美をあげる制度である側面があるので、原告以外の被害を考慮してはいけないなどと言い出したら、およそ懲罰的損害賠償など成立しなくなります。
この件ではそこまでは言っておらず、被告の防御権が奪われているというだけなので陪審審理のやり方を考えなさいということでしょうが、かなり懲罰的損害賠償に抑制的な考え方につながるものです。

そのためか、判決は5対4の僅差でして、ブライア裁判官が法廷意見を書き、ロバート首席裁判官、ケネディ・スーター・アリトーの各裁判官が賛成しています。スティーブンスとトーマスの両裁判官は反対意見を書いており、ギンズバーグ・スカリアの両裁判官がそれに組しています。
反対意見は基本的に懲罰的損害賠償の存在意義から説いてこの判断が市民の権利の制限になるとしています。

現在の連邦最高裁の保守性と微妙なバランスが現出している事件だと思います。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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