最高裁、使用者と労働者間で締結された特定の組合に所属し続ける旨の合意を無効と判断


労働協約で取り決める内容の一つに労働者が組合を脱退するのを制限するものがあります。
この代表例が、組合に加入していることを義務付けるユニオン・ショップ協定というものです。
正確には雇用後一定期間内に組合に加入しなければいけないというもので、組合員にならなかったり資格を喪失した場合は、会社は組合の請求に応じて解雇するというものです。

大半の会社でこのユニオン・ショップが締結されています。
すると、およそ組合を脱退するとか移るとかはできないことになりますが、実際には、別途労使で協議するなどして退職せねばならないような運用にはなっていません。

会社内に複数組合があることもありますので、ユニオン・ショップの実質的な意義は会社によるその組合の承認にあると菅野教授は指摘されています。

もっとも、かなりたくさんの組合を社内に抱えている場合は、オープン・ショップというのを締結しており、組合員であることを要件にしないようになっています。

さて、ある程度ゆるめのユニオン・ショップ制をとるのが実際であるとしても、組合の脱退をめぐる問題は常に発生します。
別に必ずしも解雇しなければいけないわけではないので、会社としても当の労働者の希望のままでいいはずですが、やはり労使関係の安定の観点から、会社も何らかの動きをするのが常で、このユニオン・ショップも労働法の主戦場の一つとなっています。

ユニオン・ショップ関係で、会社が労働者と個別に締結した組合に所属し続ける旨の合意を無効と判断した最高裁判決が出ましたので取り上げます。

最高裁判所第二小法廷平成19年02月02日判決 平成16(受)1787 組合員たる地位の不存在確認等請求事件

被告となっている会社は東芝、被告の労働組合は東芝労組です。

事の発端は原告である東芝の労働者が、割増賃金に関して組合に不満を持ち脱退して別の組合に加入したことです。
会社と新たしく加盟した組合・労働者は和解をして、解決金を支払い、付帯的な合意として、当該労働者はもとの組合に所属し続けることを約しました。
一方で秘密裏に当該労働者は新しく入った組合に未加入し続けるという不可解な状況がありますが、本件の法律判断には特段の影響を与えていません。

その後、配置転換をめぐる問題で原告は東芝労組と対立して脱退するとしましたが、上記の合意があるとして脱退を認めなかったために法廷闘争になりました。

原審である東京高裁は、合意を有効としましたが、最高裁は、合意に違反しても会社と労働者の間で債務不履行関係が生じるにとどまり、合意の当事者に入っていない組合との関係には影響しないとしました。
つけ加えて、そもそも加入脱退の自由を制限する本件のような合意は公序良俗に反して無効としました。

前半の会社との関係で債務不履行になるにとどまるというのはもっともですし、後半の判示もまあ妥当でしょう。
しかし、財産法では事案の解決に限った判断ばかりするのに労働法ではいやに一般法理の展開が目立つのにちょっと違和感を感じますが、まあ支持できる内容ではないかと思われます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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