NHK受信料の支払督促、異議申立てで8件が訴訟に


NHKの受信料不払いが増加している中で、対策としてNHKは法的手段をとっています。
その手段というのは、民事訴訟法382条以下にある督促手続の支払督促です。
これは単純に言うと金銭債権の支払を簡単迅速に求める手続で、督促を受けた側から異議があると訴訟に移行するので権利保障にも問題なく、手軽にできるところが長所です。

NHkは全不払い世帯に一斉に督促をしているわけではなく、いくつか選んで督促しているようですが、異議を申し立てた世帯が合計して8件にのぼり訴訟手続に移行した模様です。

*************************************************************************************************
NHKの受信料訴訟、8件に増加(日本経済新聞2006年12月26日)

NHKは25日、受信料を払わない世帯との民事訴訟の件数が先週末の5件から8件に増えたと発表した。これまで督促を無視したり分割払いを申し出てきた世帯のうち3世帯が新たに異議を申し出た。
(略)
残り15世帯のうち、25日付で4世帯について、初めての仮執行宣言を東京簡裁に申し立てた。認められれば、強制執行による取り立てが可能になる。今後さらに3世帯に対して同様の措置を取る。督促状が届いていない8世帯には改めて再送達の手続きをする。
*************************************************************************************************
記事全文はこちら

これを取り上げたのは支払督促のおさらいです。

手軽に督促できる制度があるなら、金銭などの給付訴訟の前には必ず督促が前置されそうですが、実際にはそうなっていません。
我が社の法務部でも陥った難点が支払督促にはあるからですが、それは、異議を申し立てられて訴訟に移行すると、督促した相手の住所地に管轄が固定されてしまうからです。

第395条(督促異議の申立てによる訴訟への移行)
適法な督促異議の申立てがあったときは、督促異議に係る請求については、その目的の価額に従い、支払督促の申立ての時に、支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所又はその所在地を管轄する地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。この場合においては、督促手続の費用は、訴訟費用の一部とする。

この395条より、異議があった場合には管轄は督促を発した裁判所書記官のいる裁判所になってしまいます。
それはどこかというと、

第383条(支払督促の申立て)
支払督促の申立ては、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対してする。
2 次の各号に掲げる請求についての支払督促の申立ては、それぞれ当該各号に定める地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対してもすることができる。
(表略)

となり、督促したい相手方の住所地になります。

日本の民事訴訟法では、ご存知のように持参債務の原則から原告住所地に管轄が生じます。
これは相手を自分に近いところに引っ張ってこれるのでとても有利な武器となります。
それを捨てねばならないところが支払督促の最大の難点です。

このケースでもNHKは少なくとも東京簡裁を使っていることは明らかなので、自らの本拠に近いところの不払いを選んでいるのかもしれません。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

One thought on “NHK受信料の支払督促、異議申立てで8件が訴訟に

  1. 確かNHKはH16年中に、東京23区以外、神奈川県、大阪府の不払い者にも督促状を出すと言っていたと思うんですが・・・。本当に出したんでしょうか? それとも8件も異議申し立てがあり、パニックになっているのでしょうか?北海道から沖縄までどんどん督促状を発送して欲しいですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)