最高裁、不執行の合意を請求異議事由と判断 大審院判例を変更


民事執行では、執行を受ける側が争う手続は複数定められており、それぞれ機能が分かれています。
異議を言う事由に応じて適切な手続を踏まないと執行は進行してしまうのですが、どの事由に対してどの手続を使うかで論争となっているものがいくらかあります。
そのうちの一つが、債権者債務者間に不執行の合意があった場合で、昔からどの手続で異議を申し立てるのかが議論になってきました。
執行力がある状況下で争う手続は、
請求異議の訴え執行抗告・執行異議二つです。
請求異議の訴えは、請求権そのものを争えるので実体権を争うことができます。
執行抗告・執行異議は、手続上の違法のみを争えます。
こうみると実体と手続で分けていて機能のすみ分けは一目瞭然に思えますが、不執行の合意となると、請求権の内容なのか微妙な点があるため問題となってしまうわけです。
大審院時代の判例(大判昭和2年3月16日)では、不執行の合意は、旧法の執行方法に関する異議(現行法の執行異議に相当)によるべきとしていました。この事例は、裁判外で和解が成立したケースで不執行の合意を内容から分類して、新たな条件を付したなど契約内容の実質的な変更であるなら請求異議で、そうでなくただ不執行というだけなら執行方法に関する異議によるべきとしたものです。
このため、不執行の合意だけだと手続問題ということになってしまったのですが、学説には批判が強く、請求異議事由とするべきという説が有力でした。
その理由は、そもそもの合意内容の問題が手続き上の違法となるのはおかしいからですが、下級審判決にもこれに賛同するものがでてきており、判断は完全に分裂状態になっていました。
今回、最高裁は大審院判決を変更、強制執行に訴えることの放棄・不執行の合意を請求異議事由と認めました。
最高裁判所第二小法廷平成18年09月11日決定 平成18(許)13
決定全文はこちら
決定の理由は、不執行の合意は債権の効力の一部を制限するものであるという点にあり、請求異議の事由と実質を同じくするからとしています。
学説や下級審判例の流れに同調したものといえましょう。
第35条(請求異議の訴え)
債務名義(第二十二条第二号又は第四号に掲げる債務名義で確定前のものを除く。以下この項において同じ。)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、同様とする。
2 確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る。
3 第三十三条第二項及び前条第二項の規定は、第一項の訴えについて準用する。
〔平八法一一〇第二項改正〕

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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