王子製紙の北越製紙TOB不成立、多くの教訓を残す結果に終わる


王子製紙が北越製紙に仕掛けていた株式公開買付(TOB)は、5.33%の応募しか集まらず、不成立に終わりました。
下限に達しなかったので買付は行わないことになり、株式は返還されます。

この一連の騒動をまとめた記事が、4日の日経の法務面に載ったので、取り上げます。
「M&Aの作法」と称して、一連の経過が詳しく特集されています。
私が疑問に思った三菱商事への第三者割当増資をなぜ差し止めなかったのかという点についても記述があり、ようするに三菱商事との全面戦争を避けたかったということが明らかになりました。具体的な事業の裏づけがある増資は差し止めにくいという判断もあったようですが、いきなり振って沸いたような話なので、どこまで資金必要性があっての増資かは怪しいと思われます。
王子が差し止めなかったのが結局、決定的な一撃になったわけですが、これは29日の王子の篠田社長の発言でも触れられています。その理由は多分に日本的なものだったわけです。

この記事では、買収防衛のポイントとして箇条書きがまとめられています。
質的に異なることを並べているので若干混乱しているのですが、3つほど勉強になる点がありました。
・防衛のポイントとして大型の事業計画を練っておくこと
こうすれば、いきなり大規模増資をしても支配権維持目的ではないとして差し止められにくいという話です。隠れ蓑にすると認められない場合もあるでしょうから、常に資金を要する業務拡大の計画を温めておいて、買収にさらされそうになったらそれを機会に発動させることになります。業種にもよるかと思いますが、そういうストックを作っておくのも有効かもしれません。

・買収提案者に重要事実を知らせインサイダーにする
一般的には公開買付をいきなり仕掛けてくるのはまれで、仕掛ける時点である程度ターゲットの株式を保有していることが多いです。この事前の争いで有効になるかもしれないのが、重要事実をわざと知らせて相手を情報受領者として、インサイダー取引規制のため株式を買い集めにくくするという方法です。もっとも、誰かが自分の会社を狙っていることをあらかじめつかんでおかないと意味がないので難しいかもしれません。

・攻撃側は取締役会で公開買付を含んだ買収計画を決議したら公開買付の開示をする義務が生じる
証券取引法27条の3では、公開買付者は公告をしなければいけない旨が定められていますが、いつするかについては特に書かれていません。そのため解釈問題として機関決定をしたら開示が必要ということとされるのでしょう。判例は特にないと思われますので、この実務が絶対に正しいかは分かりませんが、いつするかについては特に考えたことがなかったので新鮮でした。

日本的なお作法を考えるなら、公開買付の公告をしたら宣戦布告みたいに見えるでしょうから、友好的に穏やかに済ませたいと思うなら相手に話を十分通して、公開買付公表後すぐに相手方から賛同する趣旨のコメントがほしいわけです。しかし、そのためには自社内部で機関決定できないことになるので社内的にも決まっていない話を相手方に持っていくことになります。これでは非常に筋が変になります。

昔から日本では企業再編に対等合併にこだわったりと面子にこだわる傾向がありますが、M&Aの場面でもその傾向が頭をもたげてくると非常にやりづらいことになるというのがよく分かりました。
色々な人にとって勉強になった一件だったのではないかと思います。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)