経団連、『「独占禁止法基本問題」に関するコメント』を公表 審判制の廃止を提言


現在、再度の独禁法改正を目指して内閣府で「独占禁止法基本問題懇談会」が検討を行っていますが、違反抑止制度に関する論点整理が意見照会に付されており、これに応じて日本経団連が8月1日にコメントを公表しました。

日本経団連公表の「『独占禁止法基本問題』に関するコメント――望ましい抜本改正の方向性」はこちら

内容はナンバリングによると8項目にわたりますが、大まかにまとめると
①審判制度
②課徴金
③排除措置命令
④警告
⑤その他

となるかと思います。

①審判制度
経団連は、審判制度の廃止と裁判への一本化を提言しています。
公取委が独禁法違反行為を探知すると、審査がはじまり、「あり」と結論付けると、勧告が独禁法違反行為をしていると公取委が認識した者に対して行われます。これで応諾すると終わりなのですが、応じないと審判という裁判形式のものに移行して独禁法違反行為の有無などを争うことになります。
この審判ですが、原則としては、公取委の委員の前ですることになっていますが、実際は原則と例外が逆転しており、公取委官僚が裁判官役を勤めています。法曹関係者も3人入っており、以前よりは改善されていますが、審査をするのも公取委官僚であり、適正手続の保障がなされていないという批判が根強くあります。
経団連もこの点を指摘、司法制度改革がなされたので、独禁法に強い裁判官を養成して、争う場合は裁判手続に一本化するのが筋であるとしました。
アメリカでは同じく審判制ですが独立した行政法判事が担当する形ですので日本のお白州のような不完全さは際立っているのは確かです。
ただ、裁判手続になじむかというと難しいと思います。
特許でも審判制度ですが、これは技術的なことがあり専門家の判断になじむためだからなのですが、独禁法違反というのは特許に比べれば法律的ですが、談合など事実の問題ですむのだけではなく近時では技術の囲い込みや新しい技術の導入で他者排除が起きてしまうなど技術的な問題が増えてきています。これは裁判官の判断になじませるには難しいと思います。
審判制度は維持した上で審判官と審査官が別の組織になるようにするほうがいいのではないかと思います。

②課徴金
例によって課徴金と刑事罰の併科の問題が指摘されています。
二重取りが懸念されているわけですが、実際の運用等から結果だけ見ると併科していない欧米よりもあいまいな日本の公取委が一番甘いので、建前的には経団連の言うとおりでしょうがそのまま通すわけにも行かないテーマだと思います。

③排除措置命令
排除措置命令は「独禁法違反行為ををやめなさい」などと命じる公取委の処分のことなのですが、実はなんと言ってよいかは決まっておらず、実務の蓄積上どういう命令が出るかは分かるのですが、どこまでして良いのが厳密には分からないというあいまいさがあります。
ただ、抽象的に命令を出しておいて、ひどいときには具体的に指摘するというやり方は欧米でもやられており、明確性を欠いたりケースによってばらばらということは許容されている向きがあります。日本だと公権力がする行為というとと制限的でならなければならないという行政法の一般原則が登場するので、ぶつかってしまいますね。

④警告
大半の独禁法違反事件は、審査や排除措置命令にはいたりません。公取委は警告を与えて引っ込むということで終わるからです。
ただこの警告は法律上に何の根拠もなく、事実上の行為に過ぎません。しかし、「独禁法違反臭いのでやめなさい」というだけでは効果が弱いと思ってか、公取委は警告した事実を公表します。根拠がないためこの処分を争うことができないというのが経団連の言い分です。だから廃止すべしという論旨なのですが、簡単にすむならそれにこしたことはないので、警告や注意は有効でしょう。また実例を公開して実務にものさしを提示する意義も大きいと思います。
法律上の根拠を与えて、争う手段も設ける方が良いかと思います。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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