作家の高杉良氏、株式譲渡をめぐり日本経済新聞を提訴


最近経営権獲得をめぐり株式を公開している会社は喧しいですが、新聞各社は特権的にこういった騒動がおきないように保護されています。
「日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社及び有限会社の株式及び持分の譲渡の制限等に関する法律」という法律がそれで、日刊新聞の発行を業とする会社は、株式の譲渡制限を法律で許されており、株主は会社の事業に関係のある者に対してのみ株式を譲渡できます。
これを受けて各社では、社友と呼ばれたりしますが株式を所有する資格のある人をリスト化しています。
これをみると新聞社の経営権は安泰で静かでよさそうに見えますが、実際にはその逆で、新聞社によってはかなりきな臭い株主総会を毎年展開しているところもあります。
そのような中、日経で社友から社友とされていない人への株式の譲渡が行われ、日経側がこれを認めなかったため、株主の地位確認を求めて日経が東京地裁に提訴される事態になりました。その株式の譲渡を受けた人物が、経済小説家として著名な高杉良氏であったため、ちょっとした騒ぎになっています。

高杉良氏、日経新聞を提訴(朝日新聞2006年8月14日)
経済・企業小説で知られる作家の高杉良さんが14日、日本経済新聞社を相手取り、自らが同社の株主であることの確認などを求める訴訟を東京地裁に起こした。
 訴状などによると、高杉さんは日経の元社員から7月4日、同社株1000株を計736万円で購入する契約を結んだ。ところが日経は同13日、売買を無効と通告した。
 日経の定款は「株式の譲り受け人は、本会社の事業に関係のある者に限る」と定めている。高杉さん側は「日経から著書を何冊も出版したうえ、『日経新聞ウオッチャー』として経営改革について提言しており、事業に深く関係している」と主張している。
(略)
記事全文はこちら。日経の見解も載っています。ぜひご覧ください。

さて「日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社及び有限会社の株式及び持分の譲渡の制限等に関する法律
」は全4条しかない短い法律です。

日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律
(株式の譲渡制限等)
第1条 一定の題号を用い時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社にあつては、定款をもつて、株式の譲受人を、その株式会社の事業に関係のある者に限ることができる。この場合には、株主が株式会社の事業に関係のない者であることとなつたときは、その株式を株式会社の事業に関係のある者に譲渡しなければならない旨をあわせて定めることができる。
(株券)
第2条 株券発行会社(会社法(平成17年法律第86号)第117条第6項に規定する株券発行会社をいう。)は、前条の定款の規定を株券に記載しなければならない。《全改》平17法0872 取締役、執行役、民事保全法(平成元年法律第91号)第56条に規定する仮処分命令により選任された取締役若しくは執行役の職務を代行する者、会社法第346条第2項、第351条第2項若しくは第401条第3項(同法第403条第3項及び第420条第3項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役、代表取締役、委員、執行役若しくは代表執行役の職務を行うべき者又は外国会社の日本における代表者が株券に前条の定款の規定を記載せず、又はその規定について虚偽の記載をしたときは、100万円以下の過料に処する。《全改》平17法087
(定款の変更)
第3条 第1条の株式会社が同条の日刊新聞紙の発行を廃止し、又は引き続き100日以上休止し若しくは休止しようとするときは、すみやかに定款を変更して、同条の規定による定めを削除しなければならない。
(登記)
第4条 第1条の株式会社の設立の登記にあつては、同条の定款の規定をも登記しなければならない。

ポイントとなるのは1条で「事業に関係のある者」の意味でしょう。日経をはじめとする会社側は社友としてリスト化しているわけですが、これが合理的であるかを争うことになります。
高杉氏側の主張としては、「日経から本も出しているし経営改革について提言しているので関係者だ」ということですが、譲渡制限を認めた理由は経営権をめぐり紛争が起きる事態は言論をつかさどるものとしてはよろしくないという考えでしょう。(その考え方の当否は別論ですが…。)よって誰もが自分が関係者であると言う主張をできてしまうような解釈を是とするとは思えません。
よって本を出しているというくらいでは難しいでしょうし、日経新聞ウォッチャーなるものがどういうものか良く分からないのですが経営改革について提言していても、会社内部に招き入れるのとは違う考え方もできますし、主張としてはかなり難しいのではないかと思います。
ただこれはあくまで法律解釈と起草者の意思から考えた話で、マスコミのうち新聞にだけ特権的な地位を認める法制度には合理性がかなり怪しいのも事実だと思います。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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