東京地裁、テレビのネット転送を可能にするロケーションフリーテレビのハウジングサービスを適法と判断


ソニーが家のテレビをネット転送してどこでも見れるようにするロケーションフリーテレビという商品名の機械を発売しています。
これは、家のテレビをベースステーションという機械でネットに転送して、ベースステーションと対になっている専用モニタないしPCで視聴するというものです。
視聴できるモニタないしPCとベースステーションは完全に一対一になっており、ネットで転送とはいっても回線として利用するだけで、誰でも見れるようにするものではありません。
これは著作権的には完全に合法なのですが、この機械を設置する場所を提供してアンテナと接続させ契約者に東京で放送されているテレビ放送をどこでも視聴可能とするように場所をレンタルする事業(ハウジングサービス)を行っている業者があり、放送事業者が著作隣接権侵害で訴えています。
さしあたり仮処分に判断が下されて、東京地裁はこのサービスを合法として差止めを認めませんでした。

東京地裁平成18年8月4日決定 平成18年(ヨ)第22022号 著作隣接権仮処分事件
決定全文はこちら
事業者がアップしたものはこちらです。
※まねきTVの事業者が自らウェブサイトにアップしたものにもリンクしておきます。書記官の正本証明がついていたりして生々しいです。

このサービスは、「まねきTV」という名称で、契約者が個人で購入したソニーの機器の置く場所を提供して、契約者のもとへテレビ番組を転送するものです。
アンテナとそこから来る信号はまねきTVが設置・受信したものであり、その下に沢山のソニーのベースステーションがぶる下がるという形になります。

ご家庭のTVを外で見るなら問題にはなりませんが、自分で受信したTVをいろいろな人が見れるようにして対価をとっているわけで極めてグレーゾーンなサービスです。

東京地裁の結論のポイントは、
①ベースステーションは契約者個人の所有であり送信可能化しているのは契約者自身であること
②著作権法上、放送を自らが占有する場所以外で受信しても違法ではないこと
③まねきTVの対価は、ほかのハウジングサービス(サーバー設置など)と比較して、特に高いというわけではないので対価に放送の送信が含まれているとはいえないこと

論点は細かく詳細にわたるので、整理は難しいですが、全体をひっくるめて、まねきTVが送信可能化行為の主体ではないとしました。
①より契約者の所有物をかませれば送信可能化権侵害を回避できるように思えてしまいますが、実質的に立ち入って判断しており、購入者が自主的に購入して解約時には返還されるようになっているかを検討しています。
まずサービスありきで、加入するには形式的に機械を購入したことにするような仕組みでは、否定されると思われます。

私見での評価ですが、この理屈には相当無理があるのではないでしょうか。

確かに著作権法上、著作権侵害にならないテレビ受信の方法が特に定められているわけではありません。よって②のような見解になっており、決定中に共同受信アンテナなどが例示されているのですが、住居の形態上自らの占有にかかるアンテナで受信できない場合と、家のテレビに設置するのが本義であるのに便利だからというので、おいてつないでもらうというのは質的に異なるのではないでしょうか。
対価の高低も検討することで補強しているわけですが、ほかのサーバー設置などのハウジングと比べて高くないからアンテナと電波の対価はないといっても、差額説でも採ればそうでしょうが、アンテナとつないでくれなければそもそも契約するはずないサービスなので、アンテナ代も含まれているとみるしかないと思われます。
すると自分の受信した電波を有償で提供しているようなものですから、送信可能化の行為自体は契約者の所有にかかる機器内で行われているとはいっても、その前段が怪しいことになります。

あくまで仮処分の事案ですがこの判断は本案で覆されるかも知れないなと思いました。
著作権法で規定を欠いているところをうまくついているとは思うのですが、あくまで民事法規ですので類推適用ということで少し拡張してくる可能性もあります。
これで大丈夫だとは言い切れないのではないかと思います。

ちなみにこの決定の裁判長は例によって高部さんです。すごいなあと感心しました。

類似事件
大阪地裁、マンション用テレビ番組一括録画システムを著作隣接権侵害と判断(2005/10/25)
こちらはいったんHDD内に保存しているので、グレーではなくアウトでした。

2006年8月8日補訂
裁判所ウェブサイトの決定全文へのリンクを追加。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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