日本航空の個人株主、日本航空の新株発行差止めを請求


6月28日に日本航空の株主総会がありましたが、そこでは一言も触れないまま6月30日に取締役会で同社は公募方式による新株発行を決定しました。
公募とは言っても国内募集分と海外募集分という枠が決まっており、比例的地位の維持は望むべくもない新株発行でした。その後、海外分の枠が増やされ、国内分が減らされるという不可解経過をたどっています。

この会社法的には違法ではないものの株主にあんまりな措置であるため批判が出ていますが、このほど日本航空の一般株主一名が新株発行の差止を請求したことが明らかになりました。

差止めに関する日本航空のプレスリリースはこちら

会社法の新株発行の規定はほぼ商法のままと見て差し支えありません。
しかし、条文の書き方は相当変わっており、しかも条文上の原則と例外が現実の多寡とは逆になっていたり、色々なものをまとめて規定してしまったため、条文は相当読みにくいです。

まず公開会社は、取締役会の決議一つで新株発行が可能です。
原則は、199条より株主総会決議がいるのですが、201条1項に公開会社の例外があり、取締役会で決めてよいとなっています。
このため、総会で一言も触れずに、2日後に取締役会で決めてしまった日航の行動は、道義的にはともかく会社法的には合法です。
公募であり有利発行の問題も生じませんから、総会と関係なくやってよいわけです。

しかし、新株発行差止の要件は、210条より「著しく不公正な発行」であり、この文言は、「たとえ有利発行ではなくても資金調達の必要もないのに発行するような場合は著しく不公正な発行である」とされており、比較的広い概念です。
このためこの点から新株発行の差止めには、根拠があるかもしれないわけです。

「著しく不公正な発行」に関する判例はそれほど蓄積があるわけではありませんが、支配権をめぐる問題でないと認められにくいのが実際です。
資金調達の必要性があり、将来的に資金が還流することが予定されているなど不可解なものではない限り、取締役会の裁量を認めるのが判例です。
よって手続にあまり感心できないというくらいの今回のケースでは「著しく不公正」とまではいえない可能性が高いのではないかと思います。
ただ、海外という枠を設けていることが気になりますが、第三者割り当てではないため公開会社の株式ですから海外の株主から取得する可能性は皆無ではないため、決定的な問題にはならない気もします。

ちなみに教科書的知識ですが、新株発行されてしまうと訴えの利益がなくなってしまうので、発行差止めの仮処分をする必要があります。
この際、民事保全法14条より担保を求められる場合があります。
実務的には、ことの重大性にかんがみてほぼ確実に立担保を求められます。
ライブドアは5億円を納めましたが、この株主はわずか1000株の株主だそうなので、腰砕けな終わりになるかもしれません。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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