最高裁、振込依頼後の債権の仮差押で、送達時点で振込前だった場合には対抗できないと判断


債権回収の際、仮差押と第三債務者の弁済の微妙な時間差が問題となることがあります。

第481条(支払の差止めを受けた第三債務者の弁済)
支払の差止めを受けた第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる。
2 前項の規定は、第三債務者からその債権者に対する求償権の行使を妨げない。

差止めを受ける前に弁済してしまっていれば差押は空振りになるのですが、いまどき弁済するのに現金を持参して渡していることばかりではないので、債務者の手を離れてから金融機関の手続の間に実際の弁済まで時間があることがあります。
また、振込の期日を指定することもあるので、債務者としてはやることは完了しても同じように時間の間隔があります。
銀行との取引では、指示に従ってなした振込であれば免責されるという法的地位を作るため、いったん受けた振込依頼などは撤回できないとする約款が締結されているようですが、これはあくまで銀行を守るためのもので、実務的には撤回に応じることがあるようです。
こうなると第三債務者は、弁済が完了しており、契約的には取り消せない状況でも、実はまだ取り消せて差押債権者に弁済する変更が可能であることがあります。
こういったダブルスタンダードが絡み合い、振込依頼後、実際の振込前でまだ取り消せる時間帯に仮差押の送達がなされるというまさに極限的な事案に最高裁の判断が示されました。

最高裁判所第一小法廷平成18年07月20日判決 平成16(受)226差押債権取立請求事件
判決全文はこちら

この事案では、
12月26日 第三債務者が28日に振込むように依頼して引き落としと送金を依頼
同日 債権者が同債権を仮差押
27日の正午ごろ 仮差押命令が送達される
という経過でした。
実際には27日の午後3時ごろまでなら、振込をとめることが可能であり、第三債務者側も知っていたということが認定されている事件です。

原審は振込依頼で完了していると判断しましたが、最高裁は上記の実質に着目して弁済を対抗できないとしました。
もっとも理由はこれだけではなく、銀行間で一定時点までの振り込み撤回には組戻しを依頼する実務が振込規定として存在していることも指摘して、論拠をより補強しています。

この第三債務者は会社で、弁済したした債務は退職金でした。
会社ともなれば銀行との取引上、いつまでなら撤回できるか容易にわかることですからそれほど過酷ともいえないと思いますが、債権の存在など一般的にはわからない以上、差押えるとなったら給与債権ということになります。
こういった事態続出となると会社にとってはいささか面倒な事態を生むかもしれません。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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