最高裁、社会福祉法人の退任理事が例外的に後任理事を選任できる場合を判示


老人ホームなどを運営する社会福祉法人は、社会福祉法に定められた特殊な法人です。
ただ、定款自治を前提をしているためか、機関や内部の意思決定に関する規定を大幅に欠いており、会社法のように十分な制度的手当てのある法人とは異なり、内部紛争発生時にはどうすると法的に正当なのかがわかりにくいようです。
東京都下で最大の社会福祉法人でまさにこのような事態が発生しまして、最高裁まで争う事態に発展しました。
最高裁判所第二小法廷平成18年07月10日判決 平成17(受)614理事長選任互選不存在確認等請求事件
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事態の概要はこうです。
社会福祉法42条より社会福祉法人は理事会のほかに評議会なるものを設けることができます。
この社会福祉法人はその評議会の設置を意図して定款の変更と理事の定数減、減員となる理事の退任等を行ったのですが、社会福祉法人の定款の変更は43条より所轄庁の認可が要るのですが、これを知らなかったらしく、決議後直ちに発効したものと誤解して、理事が退任したため理事の定足数を下回る事態になっていたのに気づかずしばらく運営を行ってしまったのが事の発端です。
東京都からの指摘ではじめて知った法人側は退任した理事を復活させる扱いを行い、それまでの定足数割れで行っていた理事会の内容を追認するなどしたのですが、その後、理事長が辞任する騒ぎになり、再投票の結果理事長の交代となってしまい、この期に及んでそれまでの理事長が復活した理事は理事でないとして投票結果の無効を主張、裁判となりました。
会社では退任取締役の予後効的な権利義務の規定が会社法346条1項にありますが、社会福祉法45条は民法55~57条を準用するのみでそのような規定を準用していません。
社会福祉法
第45条(準用規定)

民法第五十五条から第五十七条まで(理事の代理行為の委任、仮理事、利益相反行為)及び非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第三十五条第一項(裁判所の管轄)の規定は、社会福祉法人に準用する。この場合において、民法第五十五条中「定款、寄附行為又は総会の決議」とあるのは「定款」と、同法第五十六条及び第五十七条中「裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により」とあるのは「所轄庁(社会福祉法第三十条に規定する所轄庁をいう。)は、利害関係人の請求により又は職権で」と読み替えるものとする。
民法
第56条(仮理事)

理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない。
このことから最高裁は、社会福祉法は社会福祉法人において理事の欠員が起こった場合は仮理事を選任して後任理事の選任にあたるという制度を採っていると解しました。
すると、理事の復活はできなくなりますが、退任した理事がそのまま後任の理事を選任できる場合として、急迫の事情と法人と退任理事の信頼関係が損なわれていないこと(要するにこじれたり解任の類ではないことと解されます)をあげ、このケースではそれが満たされているとして、理事を復活させた扱いを認めました。
認めないと意思決定機関がなかったことになるので大変なことになるところでしたが、そもそもの発端は43条にしっかり書いてあることを見落としていたことにあるとされているわけですから、なんとなくお粗末な感じがします。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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