トヨタ、会社法施行による親子会社定義の変更により持合株式議決権維持のため東和不動産への出資引下げ


5月施行の会社法では、いくつもの重要な変更が行われていますが、それに対応するための実務の動きも次々出てきています。
トヨタの筆頭株主は、自己株式を10%超持っているのでたぶん自分でしょうが、そういった議決権が発生しない分を除いた実質的な筆頭株主は豊田自動織機という会社です。
これは豊田佐吉の興したトヨタの創業部門ですが、うまく株式を持ち合っていてトヨタの有価証券報告書の「自己株式等」のところや子会社には登場しません。
そうやって安定株主の地位を守っているわけですが、会社法による子会社の定義の変更により、豊田自動織機のトヨタへの議決権が失われるおそれが出てきたため、トヨタは関連会社である東和不動産への出資比率を引き下げた模様です。


トヨタ、東和不動産への出資比率39%に下げ(日本経済新聞2006年7月8日)


トヨタ自動車が、5月施行の会社法で子会社の基準が変わったことを受け、グループ内の資本関係見直しを急いでいる。このほど非上場の不動産会社、東和不動産(名古屋市)への出資比率を49%から約39%に引き下げた。出資比率が高いままだと、トヨタの実質的な筆頭株主である豊田自動織機が保有するトヨタ株の議決権が消滅する恐れがあるからだ。
(略)

記事全文はこちら
Blog1
トヨタは東和不動産の発行済み株式総数の49%を保有していますが、この会社も豊田自動織機の株式を4.8%保有しており、トヨタが保有する豊田自動織機株式23.5%とあわせると、28.3%になり、25%を超えてしまいます。
会社法308条1項括弧書きより、25%超保有している会社が自らの株主でもある場合、自分の会社に対する議決権は消滅してしまいます。
第308条(議決権の数)
株主(株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主を除く。)は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき一個の議決権を有する。
2 前項の規定にかかわらず、株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。
308条の内容を具体的に定める会社法施行規則67条では子会社も含めて4分の1とされており、東和不動産がトヨタの子会社となると豊田自動織機のトヨタへの議決権は消滅してしまうことになります。
子会社の定義は従来は、50%超保有だったのでクリアできていたわけですが、会社法になって子会社の定義が変わりました。
第2条(定義)
(略)
三 子会社 会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。
四 親会社 株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。
(以下略)
この2条3・4号を受けている施行規則3条4条では、従来からの50%超保有だけではなく、40%超保有+議決権を同じく行使しそうな会社とあわせても50%になるなら親子会社関係になるという旨が定められています。
東和不動産は非上場会社でほかの株主にはデンソーなどトヨタと関係が深く役員を派遣している会社が並んでいるため、49%保有している現状では東和不動産がトヨタの子会社であるとされる可能性が相当あるわけです。
そこでトヨタは東和不動産への出資を引き下げて39%として40%をぎりぎり下回る水準に抑えて、東和不動産が子会社になる事態を避けることにしたわけです。
引下げ分の10%はデンソーやアイシン電機へ譲渡されたそうで実質的には支配関係は何も変わっていませんが、重要な一手だったわけです。
従来のような株式の持ち合いが減っているとはいえ、グループ会社ないでの資本関係は各地にあるわけで、敵対的買収を避けるための安定株主がクローズアップされる昨今では資本関係の洗い直しは各所で進んでいるものと思われます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)