最高裁 蛇の目ミシン事件上告審で元社長らの賠償責任を認める


蛇の目ミシン工業が仕手筋に株式を取得され、暴力団など好ましくない人物への株式譲渡を防ぐために当該仕手筋に回収不可能な金員の交付を行い会社に損害を与えたといういわゆる「蛇の目ミシン事件」ですが、その判断を下した事件当時の取締役にたいして株主代表訴訟が起こされて、高裁が責任を認めなかったため上告審にまでいたりました。

最高裁は、平成18年4月10日の第二小法廷判決で高裁判決を破棄、元社長らの責任を認め東京高裁に差し戻しました。

平成18年04月10日 最高裁判所第二小法廷判決 平成15(受)1154損害賠償請求事件
判決全文はこちら

争点となったのは、二点です。
商法266条に取締役の会社に対する責任が列挙されていますが、この事件で行われ問題となった行為2点が、法定の列挙事項に該当するかが問題となりました。

・仕手筋からの脅しに屈して金員を交付する行為が、取締役としての善管注意義務に違反するか(266条1項5号)
・好ましくない人物に株式が行かないように別の譲受人に株式の対価を交付する行為が株主の権利行使に関する利益供与に当たるか(266条1項2号→295条)
の2点です。

判決全文を読むとわかりますが、金が流れたり、担保提供をしたという実質的に利益供与をした行為が2件ですが、これら両方について、善管注意義務違反と株主権行使にかかる利益供与にあたるかの2点からの検討が行われています。

東京高裁は、金員交付に関して、暴力的な脅しであったのだからやむをえなかったとして、善管注意義務違反に関して過失はなかったとしました。利益供与に当たるかについても、喝取されたものでとして否定しました。
それに続く担保提供についても、判断としては無理からぬものがあったとしました。

東京高裁は、取締役たちに同情的だったわけですが、最高裁はこれを完全に否定しました。

善管注意義務については、いくら暴力的な脅しがあったとしても、法令に従った適切な対応をする義務があるとして過失を認めました。
株主権行使に関する利益提供の点についても、担保提供などの形をとっていても、好ましくない株主の影響力を減じようとするものだから、「株主権行使に関して」利益供与したものだとしました。

最高裁の言うことは、会社経営者、特にサラリーマン経営者には大変厳しいものですが、同情していても適切な社会になるわけではないので、妥当な判断だと思います。

総会屋や仕手筋と会社との問題は古くから指摘されてきたことで商法改正も何度もなされたところですが、実際の裁判になったことはあまり多くありません。

使いにくい原因となった商法494条の「不正の請託」の文言のせいなのですが、それでもなお不正の請託ありとされた東洋電機カラーテレビ事件やノンバンクを介して総会社の弟に融資をした第一勧銀利益供与事件など数えるほどしかありません。

この判決によって、株主の権利行使に関する場合の解釈に新たな判断が加わりました。
この辺の商法の規定は会社法でも整理されていますが引き継がれており、今後も意味を持つ判断だと思われます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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