会社法制定で社外監査役と責任限定契約を締結するための定款変更が相次ぐ


現行商法では、社外取締役との間で責任限定契約というものを締結することが可能です。
これは、会社に損害を与えた場合の賠償責任の範囲をあらかじめ定めておくもので、リスクを限定することで社外取締役の人材確保を狙ったものです。
商法
【会社に対する責任】
第266条
19 会社ハ第五項ノ規定ニ拘ラズ定款ヲ以テ社外取締役トノ間ニ於テ爾後其ノ者ガ取締役トシテ第一項第五号ノ行為ニ因リ会社ニ損害ヲ加ヘタル場合ニ於テ其ノ職務ヲ行フニ付善意ニシテ且重大ナル過失ナキトキハ定款ニ定メタル範囲内ニ於テ予メ定ムル額ト左ノ金額ノ合計額トノ何レカ高キ額ヲ限度トシテ其ノ賠償ノ責ニ任ズベキ旨ヲ約スルコトヲ得ル旨ヲ定ムルコトヲ得
(平成一三法一四九本項追加)
一 責任ノ原因タル事実ガ生ジタル日ノ属スル営業年度又ハ其ノ前ノ各営業年度ニ於テ其ノ社外取締役ガ報酬其ノ他ノ職務遂行ノ対価トシテ会社ヨリ受ケ又ハ受クベキ財産上ノ利益(次号及第七項第三号ニ定ムルモノヲ除ク)ノ額ノ営業年度毎ノ合計額中最モ高キ額ノ二年分ニ相当スル額
二 其ノ社外取締役ガ会社ヨリ受ケタル退職慰労金ノ額及其ノ性質ヲ有スル財産上ノ利益ノ額ノ合計額ト其ノ合計額ヲ其ノ職ニ在リタル年数ヲ以テ除シタル額ニ二ヲ乗ジタル額トノ何レカ低キ額
三 第七項第三号ニ掲グル額

社外の人材確保というなら活用したいのは取締役ばかりではないだろうということで、会社法ではこの責任限定契約の締結できる対象が社外監査役、会計参与、会計監査人との間でも締結できるようになりました。
会社法
第427条(責任限定契約)
第四百二十四条の規定にかかわらず、株式会社は、社外取締役、会計参与、社外監査役又は会計監査人(以下この条において「社外取締役等」という。)の第四百二十三条第一項の責任について、当該社外取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を社外取締役等と締結することができる旨を定款で定めることができる。
2 前項の契約を締結した社外取締役等が当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人に就任したときは、当該契約は、将来に向かってその効力を失う。
3 第四百二十五条第三項の規定は、定款を変更して第一項の規定による定款の定め(社外取締役(監査委員であるものを除く。)と契約を締結することができる旨の定めに限る。)を設ける議案を株主総会に提出する場合について準用する。
4 第一項の契約を締結した株式会社が、当該契約の相手方である社外取締役等が任務を怠ったことにより損害を受けたことを知ったときは、その後最初に招集される株主総会において次に掲げる事項を開示しなければならない。
一 第四百二十五条第二項第一号及び第二号に掲げる事項
二 当該契約の内容及び当該契約を締結した理由
三 第四百二十三条第一項の損害のうち、当該社外取締役等が賠償する責任を負わないとされた額
5 第四百二十五条第四項及び第五項の規定は、社外取締役等が第一項の契約によって同項に規定する限度を超える部分について損害を賠償する責任を負わないとされた場合について準用する。

会社法の施行は5月1日ですが、早速これを活用しようという動きがあり、定款を変更して責任限定契約の締結ができるようにする旨と限定する範囲を定める定款の変更が相次いでいます。


上場企業の社外監査役、「責任限定契約」相次ぐ(日本経済新聞2006年3月24日)

5月施行の会社法を先取りし、上場企業が社外監査役の賠償責任額に上限を設ける動きが相次ぐ。企業経営のお目付け役である社外監査役に有能な人材を起用しやすくするのが狙い。今月末に開催する株主総会でライオンやトレンドマイクロが定款変更を提案する。
社外監査役の賠償責任に上限を設定する「責任限定契約」は、会社法で新たに導入される制度。社外監査役の就任時に会社と契約を結んでおけば、株主代表訴訟などで敗訴した場合の賠償責任額を年間報酬の2年分までなどに限定できる 

引用元の記事全文はこちら
※引用は記事の一部にとどめています。全文をご覧になりたい方はリンク先をご覧ください。
普通の取締役も株主総会の特別決議や取締役会決議で一部免除がなされうるのですが、発動されるかはやってみないとわからないということで確実性を期したのが責任限定契約制度です。
これら全体の一部免除制度が誕生したのが平成13年改正です。
しかし、税の観点から実はあまり利用されないのではないかという見方がありました。
免除額が給与所得になってしまうことと一部免除による会社の債権放棄損が損金算入できなそうなためなのですが、対象が広がったことで税の問題とは別に従来の人材確保という目的から活用が出てきているということでしょうか。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

2 thoughts on “会社法制定で社外監査役と責任限定契約を締結するための定款変更が相次ぐ

  1. マネジメントシステムの大改造!!劇的ビフォーアフター(その50)

    ISOを効果的に活用していない事例(ISOマネジメントシステム)
    【事例48】 会社法で定められている「会社の機関設計」が組織の実情に合わせて構築されていない活用
    『傾向』
    ?100%オーナー会社なのに旧商法で定められた名目上の取締役がいる
    ?株式譲渡制限会社なのに取締役会の有無が検討されていない
    ?株式譲渡制限会社なのに監査役や会計参与の有無が検討されていない
    ?取締役会の位置付けがマネジメントシステムで明確にされていない
    『対策』
    ご存知の通り、2006年5月1日から…

  2. 会社法、「よい仕事」が企業を強くする

     内部統制や法律では不祥事を防げない 世の中、これだけ企業統治、法令遵守、企業の社会的責任などと叫ばれていても、企業の不祥事が絶えません。企業の幹部が並んで頭を下げる場面は、残念なことに今や新聞やテレビで馴染みの光景になってしまいました。 こうし……

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