ライブドア株下落による損害賠償問題で一般株主とフジテレビで明暗が分かれる


USENの宇野社長が個人でフジテレビ保有のライブドア株を取得することを受けて、フジテレビは3月16日のプレスリリースで株式の譲渡について発表しましたが、この中で取得価格と譲渡価格の差はライブドアに請求する意向であることを表明しました。
この中でフジテレビは適用法条を証券取引法18条として明記しました。
以前「ライブドア株価急落の損害賠償請求で証券取引法21条の2が適用できない問題が急浮上」で、流通市場で取得したいわゆる一般株主の適用法条は21条の2が当てはまりうるのですが、「公表」がないため難しく一般規定に行くしかないという話しをお伝えしましたが、第三者割当増資でライブドア株を取得したフジテレビの場合は立場が異なり、証券取引法18条が適用されます。
第18条(不実の届出書の届出者等の賠償責任)
有価証券届出書のうちに、重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けているときは、当該有価証券届出書の届出者は、当該有価証券を当該募集又は売出しに応じて取得した者に対し、損害賠償の責めに任ずる。ただし、当該有価証券を取得した者がその取得の申込みの際記載が虚偽であり、又は欠けていることを知つていたときは、この限りでない。
②前項の規定は、第十三条第一項の目論見書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている場合に準用する。この場合において、前項中「有価証券届出書の届出者」とあるのは「目論見書を作成した発行者」と、「募集又は売出しに応じて」とあるのは「募集又は売出しに応じ当該目論見書の交付を受けて」と読み替えるものとする。

この規定で賠償請求した場合、賠償額が19条に定められています。
第19条〔不実届出者等の賠償責任額〕
前条の規定により賠償の責めに任ずべき額は、請求権者が当該有価証券の取得について支払つた額から次の各号の一に掲げる額を控除した額とする。
一 前条の規定により損害賠償を請求する時における市場価額(市場価額がないときは、その時における処分推定価額)
二 前号の時前に当該有価証券を処分した場合においては、その処分価額
②前条の規定により賠償の責めに任ずべき者は、当該請求権者が受けた損害の額の全部又は一部が、有価証券届出書又は目論見書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けていたことによつて生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情により生じたことを証明した場合においては、その全部又は一部については、賠償の責めに任じない。

21条の2と比べても一目瞭然であるように「公表」などは要件となっていないため、フジテレビは損害額の立証を要することなく賠償を請求できます。
これに対して一般株主は、21条の2が使えないため、地道な立証を余儀なくされることになりそうです。
同じく株価下落によって損害を被った一般株主とフジテレビですが、その賠償の道は一般株主に比してフジテレビの方が圧倒的にやりやすいということになりそうです。
一般株主は市場で買っているため、「不実の届出書・報告書提出者の流通市場での証券取得者に対する責任と賠償額の限度」と表題がつけられている21条の2を適用するのは理解できると思いますが、第三者割当増資が18条で対象とされている「募集又は売出しに応じて取得した者」に当たるかにはちょっと悩むかもしれません。
募集又は売り出しというと、新規株式公開で大々的に不特定多数に販売することを意味していそうで相対取引である第三者割り当ては入らないように思えます。
これは証券取引法における私募と公募の言葉の使い分けにかかわるのですが、証券取引法では、施行令1条の7で私募の要件を、要するに未公開であることとしています。
このため公開されている株式の取引はすべて公募となってしまい、流通市場で買うのでないなら募集又は売り出しに該当してしまうわけです。
このため一般株主とフジテレビで賠償の難易度が相当変わることになるわけです。
しかしこの違いは法的には意味があるのですが、実質的には公開会社の株式を募集又は売り出しに該当する形でで取得するのは、業務提携などの機会に行われることが多いことから考えると会社という巨大組織だけでしょう。
会社財産の回復は容易でありながら、一般株主にはいばらの道というのでは、バランスを欠きそうです。
実際にはついこの間まで21条の2自体がなく、流通市場で取得した者は自己の責任でやっていることだからということで証券取引法上の保護は全くなかったのでした。
それと比べると半歩進んでいるのですが、今回のようなケースでは改正していないのと同じようなものなので大変不公平感の残る状況を生んでしまいました。
ただ、これはあくまで証券取引法に規定があるかないかの話であって株主の地位に違いはありません。よって商法・会社法でいうところの株主平等原則には反しません。
あくまで証券取引法プロパーの話であるわけです。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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