最高裁、期限の利益喪失約款つきの消費貸借契約でみなし弁済の適用を否定 上田裁判官は意見で反対論を展開


利息制限法を超過した貸出金利の消費貸借契約で、分割返済を遅滞すると期限の利益を失いこれまた利息制限法を越える遅延損害の約定があるというケースで、最高裁はこの日、平成18年1月24日の判決で、三度、みなし弁済規定の適用を否定しました。
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この事件は、いわゆる日掛け金融(法的には日賦貸金業)の事例です。
日掛け金融とは、融資対象が小規模な業者に限定され、貸出日数が100日以上とされ、業者が日数の5割以上で自ら回収にまわるなど特殊な消費貸借で、手間がかかるため特に54.75%の高金利が認められています。
念頭においているのは、小規模飲食店などへの毎日の運転資金供給などです。

この特殊性がありますが、みなし弁済など貸金業規正法の適用は同じくありまして、今回は109.5%の金利で貸し付けており、期限の利益喪失約款がついていたため、前の2件と同じく最高裁は任意性を否定しました。
期限の利益喪失約款と遅延損害の約定がある消費貸借契約では任意性を否定して、みなし弁済の適用を否定するという判断は完全に固まったといってよいと思われます。

ただ、この判決には上田裁判官の意見がついていまして、遅延損害の約定があるというだけでは、任意性の否定とまではいえないとしています。
これは、いくら遅延損害が控えているため、強制される要素があるとは言っても、強迫などとは異なるということで、任意性否定というのは行き過ぎという判断のようです。
これではみなし弁済の適用に新たに要件を課しているに等しいとしています。

確かに伝統的な意思の考え方から言えば、遅延損害を用意するだけではそこまではしていないかもしれません。
違法だけど任意に払えば有効というのもよくわからない扱いで、自然債務などまでイメージするならなんとなくわかりますが、すっきりしない法制度のせいであるのは否定できません。
よってみなし弁済の立法趣旨などから理論的に徹底してみても、妥当な結果にならないので致し方ないのではないでしょうか。

余談ですが、この意見があってもなお判決主文は全員一致となっています。
理由を読むとわかりますが、実はみなし弁済の適用要件である交付書面の内容に不備があり、そちらのルートでも適用は否定できるので結論においては一致しているわけです。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

2 thoughts on “最高裁、期限の利益喪失約款つきの消費貸借契約でみなし弁済の適用を否定 上田裁判官は意見で反対論を展開

  1. へえ~上田裁判官はなんでこれだけ反対な意見を言っておきながら「反対意見」ではなく「意見」なのだろうか、と思ってみていましたが、そういうことなんですか。かなり勉強になりました。ありがとうございます。

  2. コメントありがとうございます。最近の判決は最高裁に限らず、別の論点できっておいて、おまけで世間で注目している点について判断することが多いように思います。確かに法的にはその方が手堅いですね。しかし報道では、華々しいところばかりに注目しますから、ギャップができている感じがします。一太郎事件がギャップが特に激しかったと思います。ましーん10号の「行列のできない法律相談所?」は私も拝見しています。今後ともよろしくお願いいたします。

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