最高裁、建物の地番・床面積が相当異なっても借地借家法10条1項の借地権を対抗できる建物と判断


借地借家法10条1項より、建物所有目的の借地の場合、借地権の登記がなくても、登記がある建物の所有があれば、借地権を対抗することができます。
借地借家法
(借地権の対抗力等)
第10条
1 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
2 前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。
3 民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条第一項及び第三項〈権利の瑕疵についての売主の担保責任〉の規定は、前二項の規定により第三者に対抗することができる借地権の目的である土地が売買の目的物である場合に準用する。
4 民法第五百三十三条〈同時履行の抗弁権〉の規定は、前項の場合に準用する。

しかし登記に公信力がないことからもわかるように日本の登記はそれほど完璧ではなく、登記と実態が違っていることはしばしばあります。
このためこの10条1項について最大判昭和40年3月17日民集19巻2号453頁は、建物の地番が実際と若干相違していても、建物の種類・床面積等から同一であることがわかればよいとしています。(この事件は借地借家法によって廃止された建物保護法にあった同旨の規定に関する判例です)
しかし、ここで取り上げる平成18年1月19日の判決では、地番と床面積が相当異なっており、登記上からはおよそ借地権の存在を認識できないというケースがおきました。
判決全文はこちら
この食い違いの原因となったのは、地番の違いに関しては、地番変更に伴う職権による変更登記時のミスのようなのですが、床面積に関しては持ち主が建て増しをしながら、全く登記をしなかったためです。
この土地を競売するに当たり現況調査したところ、地番が異なっているために登記上はないはずの建物があり、借地権を対抗できない建物ありと記されてしまいました。
結果、その土地を落札した落札者から建物収去・土地明渡請求がなされたわけです。
最高裁は、登記官のミスによると思われることから、その場合は同一性を否定するものではないとして、本件競売の原因である抵当権設定時に借地権があったなら抵当権者は借地権の負担のある土地の価値を把握したことになるため、その点について審理するため差し戻しました。
登記官によるミスの類は相当「特段の事情」といえるでしょうから。借地借家法10条1項の建物の認定は、相当ゆるいとまでは一般化できないかと思われます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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