最高裁、取得時効が成立した後に当該不動産の移転登記を得た者が背信的悪意者に当たる場合について判示


登記に公信力がない日本では、登記を得ているのに実体法上の権利を有している人がほかにもいることが起きますので、さまざまな問題を生みます。
ここで取り上げる、時効取得と所有権移転登記を得た者との関係は判例も多く大変難しいテーマです。
超簡単に言うと、取得時効成立後に現れた第三者は、二重譲渡と同じであるとみて民法177条の対抗問題になります。
つまり登記を取得した第三者に対して時効を主張することはできないわけです。
ここで取り上げる判例は、まさにそういう事件でして、自らの土地への進入路として長年使用して20年の取得時効成立後、当該土地の移転登記を受けたものが登場したというケースです。
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日経の記事ですと、なんだか取得時効を主張する側が勝ったように読めますが、実は結構厳しい判決です。
時効を主張できないとすると、対抗問題になりますが、もう一つチェックしなければいけない点がありまして、それが民法177条の第三者に当たらない場合もあるという点です。
個別の法律で列挙されているものもありますが、もっとも問題となるのは、いわゆる背信的悪意者です。
これは、権利主張が信義に反しているような第三者に対しては登記なくして権利を対抗できるということです。
判例法理で生み出されたもので、登記は重いことからただの悪意では足りず、加重して背信的悪意者となっています。
原審は、譲受人は、通路として利用されていること、利用できないと土地に進入できないことを知っており、調べれば時効取得も容易に知りえたとして、譲受人を背信的悪意者として、譲受人の負けとしました。
しかし、最高裁は、時効取得を容易に知りえただけで背信的悪意者とするには、足りないとして、時効取得の事実とまで行かないまでも多年にわたる占有の認識と登記の欠缺を主張することが信義に反する事情が必要としました。
この点について、事実を審理するために差し戻したわけです。
要するに従来からの背信的悪意者排除論そのままに「第三者」を解したわけです。
ここから事実認定をやり直しですので、時効取得した側からはかなり厳しい結果といえそうです。
ただ、信義に反する事情の考え方によっては、同じ結論にすることは可能ですので、差戻し審は重要ですね。
内田説からは全く持って妥当でない判決となるのではないでしょうか。
内田教授の分類では、この紛争は境界紛争型というのにあたり、自分の土地と信じて使っていたわけだから、登記をしておけというのに無理があり、登記を得た側も実際に見てみて他者が使用している部分まで含まれているとは期待していないからというわけです。ここからは登記なくして所有権を主張できると解すべきとされているので、そのまま結論が時効取得を認めてよいということになります。
そもそも内田教授は、背信的悪意者排除論に否定的です。
理由は登記の奪い合いという横領合戦を奨励しているだけだからとされています。権利の存在に関して悪意であれば、177条の第三者には当たらないと見るべきとされています。
時効主張を認めないとしても177条の第三者に当たらないとみることで同じく時効取得者側の勝ちという結論になるでしょう。
この件でも譲受人は現状を知っていたことが認定されているため、知っていた以上、現状では利用されてしまっている部分まで取得するのは正当な期待ではないとでもするなら、内田説と結論は同じになるでしょうね。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

One thought on “最高裁、取得時効が成立した後に当該不動産の移転登記を得た者が背信的悪意者に当たる場合について判示

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