最高裁、利息制限法を上回る金利と遅滞時の期限の利益喪失特約を組合せた契約でみなし弁済の適用を否定


わかりにくいタイトルで申し訳ありません。
複雑でこれでも事件の概要を伝えるには不十分だと思います。

利息制限法を上回るものの出資取締法の刑事違法金利以下である29%の金利の分割弁済を旨とする金銭消費貸借契約に弁済が遅れた場合、債務者が期限の利益を喪失して全債務について債務不履行になり、29.2%の遅延損害の金利を負担することになる特約がついていたケースが法廷に持ち込まれ、超過分に貸金業規正法43条のみなし弁済が適用されるかが争われまして、最高裁はみなし弁済の適用を否定しました。
判決全文はこちら

これは、平成18年1月13日の最高裁第二小法廷判決です。

問題となった契約ですが、民法420条にある損害賠償額の予定の形でもって、29.2%の刑事違法ぎりぎりでみなし弁済の上限を実現しようとするもので、なかなか法的には手堅い感じを受けます。
民法に根拠がある構成をとって最近主戦場となっているみなし弁済から脱する道を用意するところなど、考えているとは思います。

しかし、最高裁はみなし弁済は自由意思で利息を支払った場合に限定されるとして、期限の利益喪失約款によって29%の金利を強制されており自由意思ではないとしました。

また、もう一点、みなし弁済の適用否定につながる判示をしています。
これは、貸金業規正法施行規則15条第2項を無効と判断したものです。

貸金業規正法43条のみなし弁済の適用を受けるには、17条書面と受取証書の交付が要件となりますが、受取証書の内容については貸金業規正法18条に規定があり、記載すべき内容をいくつか列挙しており、加えて内閣府令である施行令に委任しています。

(受取証書の交付)
第18条
1 貸金業者は、貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは、その都度、直ちに、内閣府令で定めるところにより、次の各号に掲げる事項を記載した書面を当該弁済をした者に交付しなければならない。
一 貸金業者の商号、名称又は氏名及び住所
二 契約年月日
三 貸付けの金額(保証契約にあつては、保証に係る貸付けの金額。次条、第二十条及び第二十一条第二項において同じ。)
四 受領金額及びその利息、賠償額の予定に基づく賠償金又は元本への充当額
五 受領年月日
六 前各号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項
2 前項の規定は、預金又は貯金の口座に対する払込みその他内閣府令で定める方法により弁済を受ける場合にあつては、当該弁済をした者の請求があつた場合に限り、適用する。


この委任によって貸金業規正法施行令では以下のように定めています。

(受取証書の交付)
第15条 法第18条第1項第6号に規定する内閣府令で定める事項は、次に掲げる事項(金銭の貸借の媒介手数料を受領したときにあつては、第5号に掲げる事項を除く。)とする。
一 弁済を受けた旨を示す文字
二 貸金業者の登録番号
三 債務者の商号、名称又は氏名
四 債務者(貸付けに係る契約について保証契約を締結したときにあつては、主たる債務者)以外の者が債務の弁済をした場合においては、その者の商号、名称又は氏名
五 当該弁済後の残存債務の額
2 貸金業者は、法第18条第1項の規定により交付すべき書面を作成するときは、当該弁済を受けた債権に係る貸付けの契約を契約番号その他により明示することをもつて、同項第1号から第3号まで並びに前項第2号及び第3号に掲げる事項の記載に代えることができる。


このように、施行令15条第2項より、契約番号を記載すれば、法律の方でで要請されている第一号から三号までを書かないで済ませられます。
二号は貸付年月日で三号は貸付金額ですので債務内容の確定に不可欠です。
これを省略することができるのを最高裁は問題視したようで、法律で記載を要請している内容を省くことができるように定めるのは委任の範囲を超えているとして、この施行令の規定を無効と判断、これにのっとって交付された受取証書も無効としてみなし弁済の適用の根拠を欠くとしました。

自由意志に反するという一点だけでみなし弁済の適用は否定できるので、この無効判断はより結論をより強固にするという意味合いがありますが、それだけではなく、政策的な判断もあるように思います。

平成17年12月15日の最高裁、リボルビング方式貸付で貸金業法17条の書面について判断で取り上げましたが、最高裁は債務者が慢性的借り入れから脱するために暫定的な債務額を知らせるべきという判断をしており、ここでも債務者が自らの債務額を知ることができるようにという点では共通の判断をしました。

みなし弁済規定の適用が否定される判断が相次いでいますが、社会的な背景も影響していることが非常によくわかる一件だと思います。

ちなみにこの事件の被告は消費者金融大手のアイフルの子会社シティズです。
実務上当然ですが定型的な方式をとってすべての消費貸借契約に適用しているため、大変な影響が生じると思われます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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