従業員から訴えが相次ぐなどアメリカ全土で法的紛争に見舞われているウォルマートですが、今度は州議会から医療費負担を義務付ける法律を突きつけられることになりました。
記事はこちら。
ウォルマートを標的とした法律を成立させたのは、メリーランド州で、法律の内容は同州で10000人以上を雇用している会社は支払っている給与の額の8%以上を従業員の健康保険に支出するか、州の基金に拠出するというものです。
同州ではこの条件に合致して支払義務が生じる会社はウォルマートしかなく、広く負担を求めるというよりは特定の会社を念頭にしていることが明らかなものとなっています。
同州の知事は共和党であるため、拒否権を発動していたのですが、同州は上下両院で5分の3の多数があると拒否権を無効化でき、採決できるか微妙な見込みであったのですが、結局、民主党が多数を占める議会で、法律の大部分は成立する結果となりました。
ウォルマートは激しく抵抗しており、同州からの撤退も示唆しています。
一方でこの法律は労働組合のロビー活動の結果成立したもので、同様の動きは全米30州で起きています。
成立を求める側の見解としては、ウォルマートの健康保険は、掛け金の額のせいと思われますが、加入できない社員も多く、それらの人々が公的な医療保険に流入して公的保険を圧迫しているとされています。ウォルマートはその分、自らの負担を免れているというわけです。
一方でウォルマートは、個々人がそれぞれの収入にあわせて加入できる保険に入ればいいのであって、この法律はそれになんら寄与しないと批判しています。
日本では国保と社保で、会社に入れば必ず社保になるので、こういった事態があるとは想像しにくいですが、国民皆保険の日本のほうが珍しいので、アメリカの悩みが特異なわけではありません。
企業よりの共和党、左派色を強める民主党という党派の争いに巻き込まれている感もあり、ウォルマートは労働組合を持たず組織化の標的と目されているため格好の標的となっています。ウォルマートが進出すると競争の結果、それまでの勢力が撤退に追い込まれ差し引きした結果、雇用は減るという研究があるなど、同社への視線は厳しいものがあります。ほとんどキャンペーンと化しているので厳しい状況は今後も続くと思われます。
知事の拒否権、それを議会の多数で覆せるなどアメリカの州議会の制度が伺われる点が日本と異なり勉強になりますね。