最高裁、相続で単独所有権移転登記がなされた場合に共同相続人が全部抹消を求めることができる場合を判示


民法の物権で必ず出てきますが、相続は対抗問題にならないという話があります。
これは最判昭和31年2月22日民集17巻1号235頁で示された内容で、共同相続にもかかわらず、相続財産の不動産を単独の所有権移転登記をして第三者に譲渡した場合に、もう一方の共同相続人は当該第三者に自らの持分だけの所有権移転登記を求めることができます。
対抗問題として考えるなら、登記のある方が勝つはずなので、民法177条は相続には適用されないということになるわけです。
しかし、この判決にはまだまだ判示事項がありまして、登記の抹消を求められるのは自分の持分までであり、全部抹消は許されないという点も示されました。
判決理由中で、妨害排除請求の理由となる実体的権利が共有持分の分しかないからと説明されており、もっともな話なので法的に結実したわけですが、最近になり似た事件が再び起こり、最高裁は一見すると判例を変更したのではないかという判断を示しました。
これは平成17年12月15日の最高裁判決で、同じく共同相続でそのうちの一人を相続した人が単独で所有権移転登記を受けたのに、遺産分割協議の不存在を主張して共同相続人の一人が登記の全部抹消を主張したところ、原審では持分までという昭和38年判決に依拠した判断だったのですが、最高裁は一転して全部抹消を認めました。
判決全文はこちら
ただこれは判例変更とはいえないかと思われます。
まず、判決を読むとわかるのですが、理由として示されているのが登記制度の制度的な問題で登記の技術論になっており、38年判決に示されたようなことが制度上できないために、全部抹消するというような書き方です。
持分だけ抹消するのは登記制度的には、更正登記を用いるようなのですが、この事件では、単独で登記を受けた被上告人は、共同相続人の一人をさらに相続した人物であり、登記が二件になってしまうことから更正登記では扱えないためとされています。
よって全部抹消を求められるのは更正登記制度で対応できない場合ということになるのでしょうか。
この点についてはいまいち判断しかねます。
ちなみに実質的には、昭和38年判決は第三者がいた場合ですが、この事件では第三者がいないようです。全部抹消を選択すると第三者にとってはえらくこまることになりますが、この事件では共同相続人間での話しに過ぎないので、全部抹消してしまっても困らないという実質的判断はありえます。
この点の違いは何か判断の違いに影響を与えているのでしょうか。
この点についてもよくわかりません。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)