最高裁、不作為債務の強制執行としての間接強制には、不作為義務に違反するおそれを立証すれば足ると判断


債務を強制的に履行させる方法として、民事執行法に強制執行が定められており、これらを活用することで自力救済がおきないように図られています。

強制執行は、金銭債務なら債務者の財産を取り上げてしまうなどイメージしやすいのですが、債務者の行為を目的とする作為不作為債権の場合はその態様が問題となります。
行為を求める場合なら代わりにやってしまい費用を請求することも可能ですが、債務者個人の作為が大事である場合(よく有名アーティストのライブなどが例に挙げられます)や債務者に不作為を求める場合は、「従わないなら一日いくら払いなさい」という類の命令をすることで、間接的に従わせる制度があります。これを間接強制といい、民事執行法172条に規定されています。

(間接強制)
第172条
1 作為又は不作為を目的とする債務で前条第一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。
2 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定による決定を変更することができる。
3 執行裁判所は、前二項の規定による決定をする場合には、申立ての相手方を審尋しなければならない。
4 第一項の規定により命じられた金銭の支払があつた場合において、債務不履行により生じた損害の額が支払額を超えるときは、債権者は、その超える額について損害賠償の請求をすることを妨げられない。
5 第一項の強制執行の申立て又は第二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
6 前条第二項の規定は、第一項の執行裁判所について準用する。


この間接強制ですが、どのようなときに発動できるのかをめぐって争いがあります。
というのは、不作為を命じる場合、一回でも行為されてしまうと債権者側は困るので、早め早めに間接強制の決定をもらっておきたいのですが、債務者側は何もしないうちに自由を束縛されるとは何事だと反論するからです。

しかし、債務者に作為があったということは義務違反があるということで、そうなってからでないと強制執行できないというのではかなり保護にかけるため、東京高裁は平成3年5月29日の決定で違反行為の存在は強制執行の要件でないとしています。

この点について最高裁が判断しました。
最高裁は平成17年12月9日の決定で、現に不作為義務に違反していることの立証は不要であり、義務違反のおそれの立証で足りるとしました。
決定全文はこちら

最高裁は、債権者が間接強制に違反したとして金銭債権を取り立てようとした局面で債権者が不作為義務違反を立証する必要があるため、全体を通じてみれば債務者の保護にかける点はないとしました。

高裁での判断を理屈付けも含めて踏襲したもので、債権者が違反を甘受する言われがないことを考えると妥当な判示だと思われます。

ただ不作為義務と間接強制は、反対運動の類で問題となることがあるので、運動をする側にとっては、活動に抑制的な側の線引きを求められることになりそうです。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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