最高裁、譲渡担保に供された株式の共益権の帰属は契約当事者の意思解釈と判示


法律上は規定がありませんが、認められている担保の形式に譲渡担保というものがあります。
これは、所有権の移転と被担保債権の弁済があったら所有権を元に戻す予約をセットにして行うもので、所有権移転が行われたもの自体は占有改定による移転で済ませ、担保権設定者が従来どおり使用を続けるのが一般です。
このように弁済がない場合に備えて、所有権だけ仮に抑えておくというのが実態であり、使用は従前どおりとなります。
これは動産だとイメージしやすいのですが、株式の譲渡担保となると、担保権設定者には何が留保されているのか、担保権者は何を把握したのか一概に判断することができなくなります。
使用自体は従前のままという点から単純に考えると、株主としての権利の行使は移らず、いざと言うときの換価だけを抑えたのだという考えになりますが、株式の内容には、配当などを受け取る自益権と会社の意思決定やガバナンスに関与する共益権という二種類の権利がありますし、会社も公開会社と閉鎖会社があり、一口に株式といっても価値が相当異なるため、単純に言い切れないのです。
平成17年11月15日の判決で最高裁は、刑事事件なのですが、株式を譲渡担保に供した場合の共益権の帰属について判断しました。
判決全文はこちら
この事件は、融資をする代わりに経営権を譲り受ける目的で子会社の株式を譲渡担保に受け取っていたところ、担保権設定者が無断で取締役選任等の権利を行使してしまい、担保権者側の追い出しを図ったというような事案です。
最高裁は株式を譲渡担保に供した場合の共益権の帰属は、当事者の意思によって判断するとして、株主権がすべて担保権設定者側に残るわけではないことを認めました。
その上でこの事例では、経営権の取得の目的があることと閉鎖会社であり交換価値の把握が意味を成さないことを指摘して、共益権は担保権者に帰属すると判断しました。
保振には、株式名簿と実質的株主が異なる場合に対応する規定があるのですが、だからといってすべての場合に担保権設定者に権利行使をさせればよいというわけではないようです。
交換市場のある公開会社では、担保の目的は交換価値の把握と評価できることが多いでしょうから、この判決のインパクトはそれほどでもないでしょう。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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