最高裁、同一物件に根抵当と譲渡担保を設定した場合でも担保権実行を認める


一つの物件に同一の担保権者による抵当権と譲渡担保による所有権移転登記をした場合、民法179条より混同が生じて抵当権は消滅するように考えるのが普通でしょう。
【混同】
第179条
1 同一物ニ付キ所有権及ヒ他ノ物権カ同一人ニ帰シタルトキハ其物権ハ消滅ス但其物又ハ其物権カ第三者ノ権利ノ目的タルトキハ此限ニ在ラス
2 所有権以外ノ物権及ヒ之ヲ目的トスル他ノ権利カ同一人ニ帰シタルトキハ其権利ハ消滅ス此場合ニ於テハ前項但書ノ規定ヲ準用ス
3 前二項ノ規定ハ占有権ニハ之ヲ適用セス
しかし、根抵当を設定した物権に同一の被担保債権の更なる担保として譲渡担保を設定、所有権移転登記を受けながら、この物件の担保権実行による競売を行おうとして、自らの所有権登記のある物件を競売しようとして、認められなかった事例が最高裁まで争われました。
最高裁は平成17年11月11日の決定で、競売申立却下決定を取り消し差し戻しました。
決定全文はこちら
担保権実行の可否という形になってしまったため、民事執行法181条1項に掲げられた不動産担保権実行開始に必要とされる文書に抵当権と自らへの所有権移転登記が両方書いてある登記証明書は該当するかという問題になりました。
(不動産担保権の実行の開始)
第181条
1 不動産担保権の実行は、次に掲げる文書が提出されたときに限り、開始する。
一 担保権の存在を証する確定判決若しくは家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)第十五条の審判又はこれらと同一の効力を有するものの謄本
二 担保権の存在を証する公証人が作成した公正証書の謄本
三 担保権の登記(仮登記を除く。)のされている登記簿の謄本
四 一般の先取特権にあつては、その存在を証する文書
最高裁は、下級審の判断を改め少なくとも抵当権は記載されている以上、該当すると判断しました。混同しているかどうかは、執行抗告・執行異議で争えばよいとして、文書の提出による開始を認めている民事執行制度のスピード重視の点を尊重した判断を示しました。
ついでとして、所有権移転登記の原因の記載として、譲渡担保と記載があるため、確定的の所有権を得ているとはいえないとして、単純に混同させてはいけないという配慮も示しました。
譲渡担保は法定されているわけではないため、形式的には所有権移転で公示もそのようになりますが、もとに戻る予約が契約として別にあるため、混同させてしまうと担保権者が困ることになるのは確かです。
譲渡担保は判例も認めているため、このように実態に即した判断を示したのだと思われ、妥当な内容ではないかと思われます。
ただ、この実質的判断はあくまでおまけであり、民事執行制度の手続を優先する考え方が本筋です。
手続と実態の違いが反映しているのが分かる事例でもありますね。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)