最高裁、否認の目的物が複数で可分であっても、効果は目的物全体に及ぶと判示


民法にでてくる詐害行為取消権(債権者取消権)と、破産法理で登場する否認権はともに債務者の行為を取り消すものなので根は同じです。
しかし、判例は、詐害行為取消権は、債権者が個人でやるものなので取消し範囲に自らの債権が損害を被る範囲に限られるとしています。
会社更生の事案で、従前の根抵当権設定行為がもとで消極財産が積極財産を上回る状況を生じて、一般債権者の債権回収が困難になったという事例で、更生管財人がすべての根抵当権設定を否認したところ、根抵当権者が消極財産が上回った分に限定されるべきとして争った事案の判決が最高裁でありました。
最高裁は平成17年11月8日の判決で、可分の場合でも否認の効果はすべてに及ぶとしました。
判決全文はこちら
理由としては、債権者個人の行為ではなく、更生管財人が職責上行使するものなので限界はないことと、財産や債権債務の価格の評価は、おいおい行っていくものであるため、否認権行使の時点で額を決めて切り分けすることはできないことをあげました。
非常に最もな理由付けで、妥当な判決だと思いますが、否認された側にとっては、更生担保権になるはずのところがいきなり全部が更生債権になるのにとどまってしまうわけで大変な損害です。しかし、利益を受けた側が他の債権者を害することを知らなかった場合は除かれています。この事例では、根抵当権者は知っていたと事実認定があるので、やはりこれでいいのでしょう。
 第4節 否認権           
(否認の原因)
第86条
1 次に掲げる行為であって、更生手続開始前にされたものは、更生手続開始後、更生会社財産のために否認することができる。
一 更生会社が更生債権者等を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、更生債権者等を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
二 更生会社が支払の停止又は破産、再生手続開始、更生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始の申立て(以下この条から第八十八条までにおいて「支払の停止等」という。)があった後にした更生債権者等を害する行為及び担保の供与又は債務の消滅に関する行為。ただし、これにより利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと又は更生債権者等を害する事実を知っていたときに限る。
三 更生会社が支払の停止等があった後又はその前三十日以内にした担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、更生会社の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が更生会社の義務に属しないもの。ただし、債権者において、その行為の当時、更生会社が他の更生債権者等との平等を害することを知ってした事実を知らなかったとき(その行為が支払の停止等があった後にされたものである場合にあっては、支払の停止等があったことをも知らなかったときに限る。)は、この限りでない。
四 更生会社が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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