農水省、改正種苗法により育成者権侵害製品の禁輸に踏み切る


知的財産には特許・著作権の他に半導体チップの配列なども入ってきますが、新しく開発した植物も種苗法で保護されており、立派な仲間です。

新たに開発された品種についての権利を育成者権といいますが、平成17年度の種苗法改正でこの育成者権が強化されたのを受け、農林水産省は海外で保護されておりはずの品種を栽培して日本に輸入するという育成者権侵害行為を取り締まることを決め、来年度よりそういったものの輸入を水際で差し止めることにしました。
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育成者権とは種苗法20条に規定されています。
要するに新たな品種の開発者は、利用権を専有するということなのですが、その利用権の内容が2条4項の定義にのっています。

(参考)
種苗法
第四節 育成者権
(育成者権の発生及び存続期間)
第十九条 育成者権は、品種登録により発生する。
2 育成者権の存続期間は、品種登録の日から二十年(第四条第二項に規定する品種にあっては、二十五年)とする。

(育成者権の効力)
第二十条 育成者権者は、品種登録を受けている品種(以下「登録品種」という。)及び当該登録品種と特性により明確に区別されない品種を業として利用する権利を専有する。ただし、その育成者権について専用利用権を設定したときは、専用利用権者がこれらの品種を利用する権利を専有する範囲については、この限りでない。
2 登録品種の育成者権者は、当該登録品種に係る次に掲げる品種が品種登録された場合にこれらの品種の育成者が当該品種について有することとなる権利と同一の種類の権利を専有する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
 一 変異体の選抜、戻し交雑、遺伝子組換えその他の農林水産省令で定める方法により、登録品種の主たる特性を保持しつつ特性の一部を変化させて育成され、かつ、特性により当該登録品種と明確に区別できる品種
 二 その品種の繁殖のため常に登録品種の植物体を交雑させる必要がある品種
3 登録品種が、前項第一号の農林水産省令で定める方法により、当該登録品種以外の品種の主たる特性を保持しつつ特性の一部を変化させて育成された品種である場合における同項及び次条第二項の規定の適用については、前項中「次に」とあるのは「第二号に」と、同条第二項中「前条第二項各号」とあるのは「前条第二項第二号」とする。

(定義等)
第二条 この法律において「農林水産植物」とは、農産物、林産物及び水産物の生産のために栽培される種子植物、しだ類、せんたい類、多細胞の藻類その他政令で定める植物をいい、「植物体」とは、農林水産植物の個体をいう。
2 この法律において「品種」とは、重要な形質に係る特性(以下単に「特性」という。)の全部又は一部によって他の植物体の集合と区別することができ、かつ、その特性の全部を保持しつつ繁殖させることができる一の植物体の集合をいう。
3 この法律において「種苗」とは、植物体の全部又は一部で繁殖の用に供されるものをいう。
4 この法律において品種について「利用」とは、次に掲げる行為をいう。
 一 その品種の種苗を生産し、調整し、譲渡の申出をし、譲渡し、輸出し、輸入し、又はこれらの行為をする目的をもって保管する行為
 二 その品種の種苗を用いることにより得られる収穫物を生産し、譲渡若しくは貸渡しの申出をし、譲渡し、貸し渡し、輸出し、輸入し、又はこれらの行為をする目的をもって保管する行為(育成者権者又は専用利用権者が前号に掲げる行為について権利を行使する適当な機会がなかった場合に限る。)


よって、海外での栽培自体は止められないものの、それを日本に輸入するとなると育成者権侵害となるわけです。
この2条4項は今月から施行された新しい規定で、このためを狙って新規創設されたものです。
この新設規定を利用して、水際での禁輸に踏みきることになりました。

日本に輸入される韓国産のいちごなどでは日本の品種でありながらライセンス料の支払いはほとんどないなど被害がある模様で、それがこの動きの動機とされています。

ただ、世界的なレベルに目を転じると、日本の農業品種育成能力は世界のメジャーの前には弱く、どこまで農業の知財立国の狙いがうまくいくかは、研究開発能力が肝心であるので微妙といわざるを得ませんね。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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