知財高裁、一太郎特許侵害事件で逆転判決、傍論で松下の特許を無効と判断


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一太郎の販売差し止めという衝撃的な判決がでて一大センセーショナルを巻き起こした松下対ジャストシステムの特許侵害訴訟ですが、9月30日知財高裁で控訴審判決が出ました。
知財高裁は、原審判決より結論を一転、ジャストシステムの特許侵害を認めず、松下の訴えを退けました。
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リンク先の記事や報道では、松下の特許を無効と判断したことが大きく扱われていますが、実はこれは傍論でして、本筋では、特許の組み立て方の性格上、間接侵害は成立しないというのがメインです。そもそも侵害は成立しないので、特許の有効性判断はしなくてもいいのですが、おまけで判断して無効と述べたものです。
まず、本筋の方から見てみますが、超簡単に言うと、松下の特許自体がPC本体とOSであるwindowsの存在を前提としているものだったため、それらひとまとめにして課題の解決が初めてできる構成になっていて、ジャストシステムが行っているPCとOSを除いたアプリケーションだけという、この特許からみれば一部だけの生産では間接侵害を構成しないという論理構成をとりました。
こうみると分業があたり前になっているPCの世界では特許侵害は全く起きないように思えてしまいますが、そこはクレームの書き方次第で、今回の松下の特許はつくりが悪かったのだということなのでしょう。
おまけで判断した特許の有効性ですが、控訴審でジャストシステムが新たに提出した外国の文献で進歩性がないとして無効としました。
まさにそのままで別にどうってことはないのですが、控訴審になってから新たに提出した資料が決定的な役割を果たしたため、松下側から時機に遅れた攻撃防御方法であるとして却下すべきという反論がありました。
この松下の思いは変わらないようで、判決後の松下のコメントにも現れています。
時機に遅れた攻撃防御方法は民事訴訟法157条にあるもので、わざとやかなりうっかり遅れて証拠資料を出すような行為を禁止するものです。
(時機に後れた攻撃防御方法の却下等)
第157条
1 当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。
2 攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が必要な釈明をせず、又は釈明をすべき期日に出頭しないときも、前項と同様とする。

知財高裁は原審の審理がかなり速かったことなどを上げて却下するには及ばないとしました。
マスコミが注目したことからも分かるように、特許を無効と判断することの方が重大ですが、なぜこれをおまけにしてしまったのかについては色々と意見があるところだろうと思います。
特許庁による審判と裁判所が並存している現状では、裁判所がどこまで特許の有効性判断をしていいのか明らかではありません。
キルビー半導体事件以来、裁判所も判断できる方向に舵を切っているのですが、ありとあらゆる場合に可とまではいっていません。
そのため、若干及び腰になったのではないかという嫌いもないではありません。
この裁判所がなしうる特許の有効性判断の点では、それほど思い切った変更を加えたわけではないと考えるのが妥当ではないでしょうか。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

One thought on “知財高裁、一太郎特許侵害事件で逆転判決、傍論で松下の特許を無効と判断

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