民事裁判で国家を訴えることができるかというのは、昔からある問題です。
昔は、国家を訴えることはおよそできないという考え方が主流でした。
こういう考え方を絶対免除主義といいます。
しかし、国家が商業活動に類するものを行うことも多くなってきたため、これでは不都合ということで、問題によっては主権免除を認めず国家も裁判権に服するという考え方がでてきました。
これを制限免除主義といいます。
日本は判例の蓄積がないため、大審院時代の絶対免除主義の判例がありそのままになっています。
そのため、形式的には制限免除主義ではないことになってしまうため、裁判になるとこの点を争うことが可能であり、たまに問題になることがあります。
アメリカのジョージア州の日本における出先機関・港湾局日本代表部なるところに勤めていて解雇された男性が解雇無効を求めて争っていた裁判で、ジョージア州が主権免除を主張してきたのに対して東京地裁は9月29日に中間判決を出して制限免除主義を採用、港湾局での仕事は商業活動に類するとして主権免除を認めませんでした。
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これによって入り口の問題をクリアして、本案の審理に入ることになります。
できることならば最高裁までいって判例変更が行われることを期待したいですね。
もっとも主権免除に関する立法をしてしまうというのも可能ですので、上訴にばかりこだわる必要はありません。
事実、アメリカやイギリスには立法があるのですが、日本はよほどのことがないと立法してくれないので期待薄です。