最高裁、課徴金算定基準の「売上額」は費用を差し引く前の収益の数値と判示


独禁法違反のサンクションに課徴金があります。
すべての独禁法違反に課されるわけではなく、不当な取引制限のうち商品役務の対価に影響するものだけ(独禁法7条の2)ですが、先ごろの独禁法改正をめぐり争点となったように、その法的性質をめぐり議論が続いています。

当初は、不当利益の剥奪とされていたのですが、シール談合不当利得事件(東京地裁平成12年3月31日判決)で、国が課徴金を取った上で不当利得返還請求を行った際に、減額を認めなかったことから利益剥奪との説明は困難になってきているのが現状です。

この課徴金についての新たな最高裁判決が出ました。
記事はこちら

課徴金については、独禁法7条の2より算定基準が、売上額の6%とされています。(小売業・卸売業は割合が異なります)

【事業者に対する課徴金】
第7条の2
1 事業者が、不当な取引制限又は不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定若しくは国際的契約で、商品若しくは役務の対価に係るもの又は実質的に商品若しくは役務の供給量を制限することによりその対価に影響があるものをしたときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の実行としての事業活動を行つた日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは、当該行為の実行としての事業活動がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。以下「実行期間」という。)における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の六(小売業については百分の二、卸売業については百分の一とする。)を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、その額が五十万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。
(平成三法四二本項改正)

(以下略)

この売上額とは何かが損害保険の保険料率のカルテル事件で問題となりました。
保険の場合、一部は保険金支払いのためにプールしておくため、それを売上としてしまっていいのかが問題となったわけです。

東京高裁は平成13年11月30日の判決で特殊性に注目して支払い保険金を除くという判断を示しましたが、最高裁は平成17年9月13日の判決でこれを否定して、費用を差し引く前の収益を売上額とするべきことを判示しました。
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最高裁が理由としてしめしたのは、内容的には3点示されています。
①行政上の措置である以上、算定基準は明確であることが必要である
②独禁法施行令に定められた売上額から控除してよいものに該当しない
③売上額に乗ずる比率を算定する際、分母にした売上額が費用を差し引く前の数値だった

よって、差し引くことを認めず、保険料全額に6%を乗じた課徴金としたわけです。

これを見る限り妥当な論理展開だと思われますが、①の算定基準の明確の帰結として、課徴金は不当利得と一致しなくてもよいと言っており、不当利益剥奪説はよりいっそう弱まってきている感じです。
罪刑の均衡を失わない限り、2つの制裁を科するのは可とする見解もあり、課徴金の法的性格論争にも一石を与えそうです。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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