最高裁、貸金業者は債務者から求められた場合には取引履歴の開示義務があると判示


消費貸借契約(いわゆるサラ金)では、継続的に取引することが常態化しているため、いつ、いくらの金利でいくら借りたか、そしていくら返済していくら残っているのかなどがよくわからなくなることがあるようです。
そのため、貸金業者に問い合わせて詳しく調べないと債務額の確定すらできない模様ですが、一般的に開示は拒まれます。
これは利息制限法のみなし弁済の規定があるためにあまり詳しく開示したくないというところに理由があると思われますが、裁判で争われ、貸金業者側の姿勢を変えさせるべく動きが相次いでいます。
この度、最高裁第三小法廷は高裁の判決を変更、貸金業者は債務者から開示を求められたら取引履歴の開示義務を負うとした判決を行いました。
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原審である大阪高裁は開示義務はないとして、理由を二点挙げています。
①契約関係の信義誠実の原則から当然に開示義務があるとはいえないこと
②事案との関係で開示請求の理由は過払い金返還請求のためであり、債務を確定して債権者への平等的弁済のためではない。不開示だとどう困るのかも明らかにせず、ただ開示を求めただけであり、この点からは応じなかったことは不法行為とはいえないこと

しかし、最高裁では新たな点として、貸金業法19条が貸金業者に業務帳簿をつけることを義務付けている点を重視、新たな判示を展開しました。

(参考)
(帳簿の備付け)
第19条
貸金業者は、内閣府令で定めるところにより、その営業所又は事務所ごとに、その業務に関する帳簿を備え、債務者ごとに貸付けの契約について契約年月日、貸付けの金額、受領金額その他内閣府令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。

最高裁は、債務者が契約の内容を記載した17条書面や弁済時に受け取る18条の証書をなくすことがありうるし、みなし弁済の規定をめぐり債務者との間に争いが生まれうるために業務帳簿があるとして、債務者へ提供するという目的が内在しているとしました。
また、貸金業者にとって提供は大した負担でもないとしており、以上より、特段の事情がない限り、開示義務があるとしました。

なくしても教えてあげなさいとは随分と手厚い話に聞こえますが、多重債務の場合、生活の再建がままならず、そこからの脱出を手助けしてやるという重要性と、実は金利計算は結構難しいという点に理由を帰すことができるでしょう。

よって、ことの重要性にかんがみている点がかなりあり、継続的契約関係にあるならば必ず取引履歴を求められたら開示せねばならないとまでは一般化できないでしょう。

やはり貸金業ゆえの特殊事例と位置づけるべきでしょう。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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