最高裁、第三者異議の訴えに法人格否認の法理を適用


民事執行法に第三者異議の訴えというものがあります。
債務名義に執行力が付与された状況下で、執行目的物が執行債務者の責任財産ではないことを理由として債務名義の執行力を排除する訴えで、通説判例は形成訴訟としています。
要するに、いざ執行しようとしている財産が、債務者の物ではないときに、そう主張する第三者が起こせる訴えです。
実体関係に合致していない執行というのは起こりうるために、それを正すための非常装置みたいなものですが、執行逃れのために第三者に移してしまい、第三者異議を起こすという悪用の例もあります。
そういった場合のうち、法人が第三者異議を起こしている場合について最高裁から判決がありました。
最高裁判所第二小法廷平成17年07月15日判決 平成16(受)1611第三者異議事件 民集第59巻6号1742頁
事案は、とあるゴルフ場の会員が脱会して預託金の返還を命ずる判決を得、それを債務名義としてゴルフ場に動産執行をかけたところ、預託金の返還義務のあるゴルフ場運営会社はゴルフ場の運営を信託にしてしまい委託者となっており、ゴルフ場の運営の業務委託を受けている原告が、動産執行されたゴルフ場にあった現金や芝刈り機などは自分の所有にかかるものであるとして第三者異議の訴えを提起したものです。
もとのゴルフ場運営会社と受託者と受益者および業務委託先の会社はすべて実質的に同一の会社であり、典型的な法人格の濫用の事例であることが認定されています。
最高裁は、このような濫用的な場合は法人格否認の法理を適用して強制執行の不許を求めることは許されないと判示しました。法人格否認の法理というと江頭教授が有名ですが、この場合では、上告している第三者であると主張する法人は、濫用であるので執行債務者とは別の人格であることを主張できないということになります。
本件では理由として、第三者異議の訴えは目的物について原告が権利を有することを理由とするものであり、債務名義の執行力の拡張が問題となっているものではないからとしています。
これと同じような執行逃れの法人格濫用の場合に債務名義の執行力を拡張できるかについては、民集には登載されていませんが判例があり、拡張は認められません。(最判昭和59年9月14日判時906号88頁)
よってこの事例でも、いきなり動産執行しないで、業務委託先の会社に対する執行文付与の訴えをしていたら結論が逆になったと考えられます。
このアンバランスが果たして妥当なのかは非常に疑問ですが、とにかく法人格を濫用しての執行逃れの際はまず執行するようにするという対処が定式化できるかと思います。
【補訂情報】
平成19年8月27日 リンク切れの修正と内容を大幅に加筆しました。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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