東京地裁、行訴法に基づく種苗法の品種登録の無効確認訴訟を認める


知的財産権の一種に植物の品種の独占権があります。
これは種苗法という法律に規定されたもので新品種の育成者またはその承継人は品種を登録する代わりに独占権が与えられます。
特許法に類似した制度設計で、実は平成10年の種苗法全面改正によって登場したばかりの新しいものです。

しかし、特許法類似とはいうものの特許法ほど精緻なものではなく、特許法にあるような審判制度もありません。
しかし独占権は与えられる以上、利害関係者は出るわけでそういった人々が品種登録について争う制度が規定されていないことが問題になり、この度東京地裁で司法判断が示されました。
記事はこちら
判決の全文はこちら

ちなみに裁判長は高部裁判官です。

事例としては、別業者が登録された品種の無効を訴えたというもので、特許でいうならライバルが特許の無効審判を申し立てたというようなケースです。

結論としては、特許法と比べて無効審判制度がないということは行政事件訴訟法で訴えることができると判断しました。
種苗法では農林水産大臣が違法な登録がなされた場合は職権で取り消すべきことが定められているだけですが、それ以外は一切ないわけではなく一般法である行政事件訴訟法にまで立ち返り農林水産省を相手取って訴訟を起こせるとしたわけです。

特許法で、審判制度があるのは技術は専門家である特許庁に任せるべきであろうという判断がありますので、種苗も科学的で司法判断よりは専門の審判制度があった方がよいのでしょうが、種苗法の制度もあまり精緻でないことから、裁判所を舞台にしてもそれほど問題はないだろうという判断でしょう。
そもそも一切争えないというのもおかしな話ですし。

しかし、今回の事例では、こうして訴えの適法性は認めたものの品種登録は適法という結論だったので問題はでませんでしたが、どういう場合司法が違法と判断してよいのかは問題になります。
というのは、特許では審判とは別に訴訟が起こされた場合、明らかに無効の場合は裁判所は特許庁の判断とは別にして特許の無効の判断をできるという判例(キルビー半導体事件)があります。
本来ならこのスタンスが種苗法にも妥当してきそうですが、種苗法の場合、審判制度がないため訴訟に集中させざるを得ないわけで、抑制的にするわけにも行かないでしょう。

しかし、種苗法の制度は精緻でないとはいえ、バイオテクノロジーの発達のため問題として顕在化してくるのは結構技術的で細かい事象のようです。だとすると裁判所の手にあまる事態も起きてくるかもしれません。上記リンクの判決全文を読む限りではまだまだ簡単なケースのようですが、植物の品種の世界も世界のメジャーが跋扈しているところですので、問題がどんどん起きてくる可能性は無きにしも非ずでしょう。

実は世界規模で品種の囲い込み競争が起きつつあるので、長期的には種苗法の再改正による制度の精緻化が必要かもしれませんね。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)